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「異端で結構」慶應義塾高の森林貴彦監督が語る”エンジョイ・ベースボール”の真相「坊主頭は…」「(清原勝児は)純粋に野球が好き」 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/05/24 17:02

「異端で結構」慶應義塾高の森林貴彦監督が語る”エンジョイ・ベースボール”の真相「坊主頭は…」「(清原勝児は)純粋に野球が好き」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

今年の選抜高校野球大会に出場した慶應義塾高校の森林貴彦監督。1回戦で咋夏の甲子園覇者・仙台育英と大接戦を演じるも延長タイブレークの末に1-2で敗れた

 森林は指導者の一方通行で選手を導こうとはしない。双方が共に育っていく姿勢を重んじる。「勝利至上主義」ではなく「成長至上主義」であるべきだと、理念を説く。

「育成年代を預かる指導者としては、子供たちの人生を念頭に置きながら指導しないといけません。これからは、自分の頭で考えられる、アイデアを出せる人材がもっと大事になってくる社会において、『監督に言われたからこうした』という3年間であってほしくありません。そこで何を至上命題とするかとなると、私は成長だと思っています。野球選手としての成長、人としての成長があって、チームの成長があると思っていますので」

「プレッシャーを自分の力に変えて頑張りたい」

 今年のチームに清原勝児という選手がいる。

 父親は元プロ野球選手の清原和博。超一流の証である通算2000安打を記録し、歴代5位の525本のホームランを記録した名選手だ。試合になれば多くの報道陣に囲まれるほど注目を浴びるその息子は、森林に自らの意志をはっきりと明示しているのだという。

「人から見られるプレッシャーを自分の力に変えて頑張りたいです」

 監督が選手を尊重し、目じりを下げる。

「お父さんの存在は大きいですけど、純粋に野球が好きで、うまくなって活躍したいという気持ちを持ち続けて一生懸命やってくれています。チームメートもそんな彼に嫉妬などすることなくうまく包み込んでくれていますからね。私も取り立てて彼を個別にどうこうしようと考える必要がないんです」

 楽しむために野球のレベルを上げ、勝つためにチームとしての成長を促進する慶應義塾が戦った、5年ぶりの甲子園。仙台育英との初戦で清原がヒットを打ち、スタンドが沸く。リードを許していても、選手たちには笑顔があった。昨夏の全国制覇を経験するメンバーが多く残る優勝候補に延長戦まで食い下がったものの、試合は1-2で敗れた。

 森林はしかし、「これが野球を楽しむことなんだ」と、慶應義塾の根っこを強調した。

「甲子園という舞台で、素晴らしい相手とああいう試合ができたというのは、勝ち負けを別として非常に素晴らしい経験でした」

 グラウンドでたなびく長髪。負けていても悲壮感のない選手はスマートに映る。人としての成長があっての勝利を強調する森林は、チームで築く「慶應スタイル」を発信し続け、高校野球の新たな道筋を示す。

 人は時に、その志を「異端」と呼ぶ。

「今は、『異端で結構』と思っています」

 それでも改革者は、不敵に笑う。

【動画を見る】雑誌ナンバーの記事が全て読めるサブスク「NumberPREMIER」にて、森林監督のインタビューを収録した動画【完全版】慶應高校野球部 森林貴彦監督 異端の指導論「高校野球を変えたい」が見られます。「異端」とも言われる指導論をたっぷりとご覧ください。

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