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「打率.438!」鈍足の天才DeNA宮﨑敏郎34歳と「4割打者の激レア度」 近藤健介は規定未満.413…バースやイチロー、張本勲は?
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広尾晃Kou Hiroo
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posted2023/05/22 17:27
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まさに「打ち出の小槌」状態の宮﨑敏郎。打率4割台をどこまでキープできるか
なお、1936年春夏の小川は、今で言えば規定打席をクリアして打率.477で全選手中1位だったが、日本プロ野球の創設年で、まだ規定打席も個人成績も設定されていなかったので、公式には4割打者と認定されていない。
なお、開幕から最も遅くまで4割をキープしたのは、1989年の巨人ウォーレン・クロマティ。96試合目、8月20日の阪神戦まで.401をキープ。この時点で規定打席(当時は403)に達していたが、以後、打率が下落、最終的に.378で終わったが首位打者、MVPを獲得した。
ハイアベレージを記録した打者の“2つの共通点”
過去に高打率を記録した打者には、共通点がある。
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一つは「左打者」であること。歴代シーズン打率5位までの打者もすべて左打者。近藤健介、クロマティも左打者だった。左打者は右打者よりも数十センチ、一塁への距離が近い。また一般的に左打者は右投手が得意だとされるが、右投手の方が圧倒的に多いことが、左打者の高打率を生んでいるとされる。
もう一つは出塁率が高いこと。
NPB史上最高打率のバースは.481でセ・リーグの最高出塁率を記録している。これに次ぐ2000年のイチローも.460で最高出塁率だった。出塁率は「安打+四死球での出塁」で打率が高い選手が高くなる傾向にあるが、四死球での出塁が多い方が打数が少なくなって「1安打当たりの打率」が高くなる。
その典型が近藤健介だ。今年のWBCでも抜群の選球眼を発揮した近藤だが、2017年の近藤は167打数69安打だったが、60もの四球を選んでいる。打率.413とともに、出塁率は驚異的な.567だった。
これに加えて足が速い方が有利なのは間違いないところだ。イチロー、張本勲などは足で稼いだ安打も多かった。
今季の宮﨑敏郎は、出塁率こそ.522と高いが、右打者であり、通算991試合で盗塁数0、盗塁企図数も0と「走らない選手」ではある。4割打者の条件に当てはまらない部分が多いのは事実だ。
ドラフト6位の異端アベレージヒッターである宮﨑
宮﨑は2013年社会人のセガサミーからドラフト6位で入団。大谷翔平や藤浪晋太郎が注目された年だが、地味な入団だった。デビュー時すでに24歳。
しかし天性のミート力、スイングの速さに加え、めったに三振しないシュアな打撃で頭角を現し、2017年に首位打者を取ってから昨年まで6シーズンで5回3割を記録。通算打率も.306と当代屈指のアベレージヒッターになった。
筆者は2月、奄美大島のDeNA二軍キャンプで調整する宮﨑を見たが、チームは34歳の宮﨑を、無理をさせず調子を見ながら起用。さらに今季は、38試合を消化して4試合休んでいる。こういう起用が続くとすれば、宮﨑は規定打席ぎりぎりくらいの打席数で推移するとみられる。これは高打率をキープするうえでは有利だ。
なお今季の宮﨑は本塁打、打点でも上位につけている。DeNAが優勝すれば有力なMVP候補だろう。
野球の数値を統計学的に分析するセイバーメトリクスでは「本塁打以外の打球が安打になる率は、投手のタイプに拘わらず3割前後に落ち着く」という説がある。