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「結末はわかっていたのに、大号泣」アニメウマ娘『ROAD TO THE TOP』は1999年菊花賞をどう描いた?「アグネスデジタルが観客席にいた理由は…」 

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屋城敦

屋城敦Atsushi Yashiro

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photograph byCygames, Inc.

posted2023/05/21 17:01

「結末はわかっていたのに、大号泣」アニメウマ娘『ROAD TO THE TOP』は1999年菊花賞をどう描いた?「アグネスデジタルが観客席にいた理由は…」<Number Web> photograph by Cygames, Inc.

左からテイエムオペラオー、アドマイヤベガ、ナリタトップロード。1999年クラシックの結果はわかっているはずなのに見入って感動するファンが続出した

 しかし、ナリタトップロードの不安は晴れない。そんな彼女に、ある日トレセン学園でテイエムオペラオーが話し掛けてきて、奮い立たせてくれる。ナリタトップロードの渡辺薫彦騎手とテイエムオペラオーの和田竜二騎手は幼なじみで親交が深く、日本ダービーやこの後の菊花賞など、競馬場でも親しげに言葉を交わしているシーンがファンにもたびたび目撃されている。

 真面目な渡辺騎手と陽気な和田騎手というふたりのキャラクターを知っていると、ウマ娘のナリタトップロードとテイエムオペラオーの会話がふたりのそれに重なってきて、なんだか微笑ましい。

 場面は変わってその日の夜。ナリタトップロードがアドマイヤベガに「アヤベさんを超えてみせます!」と宣言し、闇に堕ちかけていたアドマイヤベガを食い止めたシーンにも、史実のエピソードが盛り込まれている。ナリタトップロードは「ダービーのあと、あの時の映像を何度も見返しました」と語っているが、当時渡辺騎手もビデオテープ(当時はDVDが普及する前で録画にはVHSが使われていた)が本当に擦り切れるほどくり返し見て研究していたという。シーンに集中していたら聞き流してしまいそうなフレーズだが、こんなところにも史実ネタが盛り込まれていたのだ。

カレンチャンとアドマイヤベガの共通点

 そしてついに本番を迎える。レースを前に、幾人ものウマ娘の姿が映し出される。スタンドの観客席にはメイショウドトウやオグリキャップ、ライスシャワーにハルウララ、カレンチャンなど、第3話までに登場したウマ娘たちも顔を揃えていた。

 栗東寮でアドマイヤベガと同室で、まるできょうだいのように彼女を心配してきたカレンチャン。なぜカレンチャンはそこまでアドマイヤベガに尽くそうとするのだろうか。

 史実での共通点を探すと、2頭とも母父がトニービンである。……だがそれだけでは、カレンチャンによるアドマイヤベガへの献身の理由とするには少し弱い。そこで、主戦騎手の関係性に注目してみると、カレンチャンの主戦はアドマイヤベガの主戦、武豊騎手のことを自称・誰よりも知る男、池添謙一騎手だ。1999年当時、池添騎手はデビュー2年目でそれほど親密ではなかったかもしれないが、現在の関係性が影響していると考えると納得できる。

【次ページ】 「さあ、行こう」「頂点への道!」

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