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「那須川天心の本質は“倒し屋”ではなく“勝負師”」なぜボクシングデビュー戦で“日本人選手との対戦”を希望した? 記者が目撃した覚悟の正体

posted2023/04/28 11:04

 
「那須川天心の本質は“倒し屋”ではなく“勝負師”」なぜボクシングデビュー戦で“日本人選手との対戦”を希望した? 記者が目撃した覚悟の正体<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

ボクシングデビュー戦で判定勝ちを収めた那須川天心

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Hiroaki Yamaguchi

「じゃあどうすればいいんだよ」

 本人でもないのに言い返したくなった。ボクシングデビューした那須川天心のことだ。

 キックボクシングの世界で“神童”と呼ばれた超一流ファイター。中学卒業後すぐにプロになり、主戦場RISEの世界トーナメントで優勝した。RIZINではMMAにも挑戦し、トータル47戦全勝。ボクシング世界5階級制覇のフロイド・メイウェザーJr.とのエキシビションも話題になった。

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 昨年6月、満員の東京ドームで行なわれた武尊戦を最後にボクシング転向。今年4月8日のデビュー戦(6ラウンド)で判定勝利を収め、日本スーパーバンタム級7位にランクされた。東洋太平洋ランキングは8位となる。デビュー戦で日本バンタム級2位の与那覇勇気に勝ったことが評価されてのことだ。

“ハードルの高さ”が、見る者によって違いすぎた

 那須川のボクシングデビューに関しては、さまざまな見方があった。その一つは「キックの“神童”はボクシングでも通用するのか」ということだ。同じ打撃系格闘技でも、ルールが違えば技術も、必要とされる資質も違う。キック時代のように連戦連勝といくかどうか、そもそもボクサーとして“強い”のか。

 その一方で“強い”ことを大前提とする見方もあった。世界戦はいつか、何戦目で世界タイトルに挑戦するのか、と。

 さらに試合が終わると、世界4階級制覇を狙う井上尚弥と比較する声も。ダウンを奪っての判定勝ち、KOを逃したことから、パンチ力を疑問視する者もいた。「これでは世界タイトルは遠い」というわけだ。

「ボクサーとして一人前かどうか」から「ボクシング界のパウンド・フォー・パウンドに勝てるのか」まで。ハードルの高さが見る者によって違いすぎた。本当にどうすればいいというのか。

那須川天心は“分かりにくい”のか?

 “群盲象を評す”なのかもしれない。それだけ「無敗のキックボクサー・那須川天心」という存在が大きいのだ。ボクシングは専門の記者も多く、他の格闘ジャンルまで詳しいとは限らない。だから余計に那須川の“実像”も掴みにくい。

 たとえば、那須川のボクシング転向に関連して「キックボクシングのルール変更」に言及した記事があった。那須川の主戦場RISEではムエタイのようなヒジ打ちが禁止。ヒザ蹴りも組み付いての連打がない。そのためボクシングに適応しやすいという論評だ。

 それはおそらく正しいのだが、キックボクシングのルール自体が変更になったわけではない。従来通りヒジありのキックボクシングも行なわれている。

 キックボクシングにはさまざまなルールがあり、RISEやK-1などヒジなしルールの団体も増えているということ。RISEとK-1でもルールが違うし、厳密に言うとK-1は“K-1という競技”を標榜しておりキックボクシング団体ではない。キックボクシングのルールが変更になったから那須川がボクシングに行きやすくなったという表現は正確ではないのだ。

 そうした誤解、情報不足も含めて、ボクシング界から見た那須川天心は“分かりにくい”のだろう。

【次ページ】 デビュー戦は「快挙」なのか「物足りない」のか

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