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《世にも恐ろしいスポーツ》「未練を断ち切って全部捨てたはず、なのに…」なぜかやりたくなってしまう…ヤバい“雪合戦”の話

posted2023/04/07 17:46

 
《世にも恐ろしいスポーツ》「未練を断ち切って全部捨てたはず、なのに…」なぜかやりたくなってしまう…ヤバい“雪合戦”の話<Number Web>

4年ぶりに開催された「昭和新山国際雪合戦」。事実上、雪合戦の世界一を争う。写真は専用の製造機で雪球をつくる様子。雪球が割れないよう製造機で圧雪した上に、両手で固める

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中村計

中村計Kei Nakamura

PROFILE

 ルールに則って行われる、スポーツとしての雪合戦がある。最高峰の舞台「昭和新山国際雪合戦」は誕生から30年以上の歴史があるが、2020年から3年間、その歩みは途絶えた。新型コロナ感染拡大の影響である。そして今年、2月25日から26日に渡って実に4年ぶりに大会が開催されたが、その姿は、変わり果てていた。3年間のブランクによって雪合戦界が負った傷は想像以上に深かった。

 関東最強と呼ばれた雪合戦軍団「千葉レイブンズ」の創設者であり、『雪合戦マガジン』の初代編集長でもあるノンフィクションライターの中村計氏が「コロナ後」の雪合戦界をレポートする。【全2回の2回目/#1へ】

 ◆◆◆

「雪合戦界は、もう衰退していってるよ…」

 参加チームの極端な減少は、新型コロナのせいだけではない。『雪合戦マガジン2022』によれば、2015年に全国で1106組あると推定されたチーム数は年々減り続け、2020年には683組にまで落ち込んでいる。

 もちろん近年は、少子高齢化の影響もあり、あらゆるスポーツが競技人口の減少に頭を悩ませている。だが、雪合戦の場合、それだけを理由にはできないほどの激減ペースだ。新型コロナの感染拡大がなくとも、今年は、相当厳しい参加数になっていたことだろう。

 いずれにせよ、相当弱っているところに、新型コロナ禍がトドメを刺す恰好となったわけだ。雪合戦マガジンの編集長・山田雅志は、各チームの今年の活動状況をこう推測する。

「何らかの大会に参加できたチームということで言えば、今年は全国で200ぐらいじゃないでしょうか。今年も全部の大会が開催できたわけではないので、やりたくてもやれなかったチームもあると思います。ただ、残念なことに、今年になって、また消滅してしまったチームもたくさんあります」

 最盛期には、雪合戦チームは全国で1500組ほどいると言われていた。前身のうえはら生花店時代を含めると昭和新山の優勝4回を誇るSKYWARDの主将で、雪合戦界のレジェンドと言っていい存在の宮下博州が、こうこぼすのもうなずける。

「雪合戦界は、もう衰退していってるよ……」

 大会を見終えるまで、私も今の雪合戦界を表現するのに「衰退」という言葉以外、思い浮かばなかった。

「こんなにエキサイティングな競技は他にない」

 確かに、大会規模は物足りなかった。しかし大会2日目に入り、準決勝リーグ、決勝トーナメントと進み、トップチーム同士の試合になると、磨き抜かれた技と、練られた戦術に、ぐいぐいと引き込まれた。ときに思わず体をのけぞらせ、ときに「おおぉ」と感嘆の声が漏れた。

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