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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「ソシエダへの興味」は久保建英加入前から…J2徳島・強化本部長が明かす“業務提携の真相”とスペイン路線、選手獲得サイクルの狙い
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE,Masashi Hara/Getty Images
posted2023/04/05 11:20
背番号8をつけた柿谷曜一朗に岩尾憲……徳島ヴォルティスがクラブ強化で考えていることとは?
今季の補強のラストピースであり、サプライズだった柿谷には、単なる戦力にとどまらない期待がかかる。
「去年は相手を押し込む回数は多かったのに、得点が少なかった。エリア近くで違いを出せる選手が必要で、そういう部分での期待が曜一朗にはあります。でも、それだけではないんです。うちで活躍してセレッソ大阪に戻って日本代表になって、W杯にも出て、海外でもプレーしたじゃないですか。そういう経験を若い選手たちに伝えてほしい。曜一朗と一緒にプレーすることで、若い選手に日本代表や海外をイメージしてほしいし、そういうのを目指して若い選手がうちに来てほしい」
僕が強化担当になった頃、予算規模は…
このインタビュー中、岡田は「最も負けている強化担当」「ポンコツ」「頼りない」と何度も自虐の言葉を口にした。
「だって、僕が強化担当になった頃、予算規模は6億円くらいだったんですよ。それが今は4倍の24億円くらい。6億円のクラブで失敗した強化担当が24億円のクラブの一番上をやっている。ヤバくないですか(苦笑)。しっかりしないとなって思います。昔は批判されて悩むこともあったんですよ。そうしたらプロ選手だった弟(岡田直彦)から、『選手としてなんの実績もなくて、強化として結果も出せていないのに、批判されなかったらおかしいよ』と言われ、確かにそうだなって。勝ち残ってきた人だからやれることもあれば、僕のように勝ち残れなかったからこそ、できちゃうこともあるんじゃないかって」
こうして岡田は徳島の強化に18年間携わってきたが、言い方を換えれば、誰も岡田をクビにしなかったということだ。
人を大事にする、というのは、徳島の文化なのかもしれない。
歴代監督を見ても、05年のプロ化から8人しかいない。“サッカー監督は世界で最もクビになりやすい職業”と言われるなかで、これは極めて少ない人数だ。徳島がいかに監督を大事にしてきたかが分かる。
結果として2年で退任することになったダニエル・ポヤトスにも契約延長のオファーを出していたから、ガンバ大阪に引き抜かれなければ、今オフの監督交代もなかった。
「一緒に作っていくという姿勢はうちが大事にしていることかもしれませんね。実際、僕以外にも在籍の長いスタッフがいて、しっかり積み上げていこうとしています。もちろん、そこには岸田一宏社長やスポンサーの考えもあると思います」
徳島杉で作られたクラブハウスとともに文化を
2月19日の大分トリニータとの開幕戦は、ポカリスエットスタジアムが1万2000人の観客で埋まった。翌日に行われたサブ組の練習試合も平日の昼間にもかかわらず、たくさんのファン・サポーターが見学に訪れていた。
その練習場には21年に完成した、徳島杉で造られた素敵なクラブハウスが建っている。
「この街で、フットボールを文化に成熟させていければ、すごく素敵だと思うんです」
18年前の岡田には想像もできなかった世界が目の前に広がっている。だから、5年後、10年後、今はまだ想像できないような世界が待っていても驚かない。
(#1からつづく)
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