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「3年生の夢を壊してしまった」11連覇ならずの“あの日”…作新学院“センバツ8強”をいかに成し遂げたか? 超全員野球のウラ側 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2023/03/30 11:02

「3年生の夢を壊してしまった」11連覇ならずの“あの日”…作新学院“センバツ8強”をいかに成し遂げたか? 超全員野球のウラ側<Number Web> photograph by KYODO

昨年「夏の県大会」連覇が途絶えた作新学院。すぐに帰ってこられた甲子園で、チームの結束力を全国に印象付けた

 選手の立場から言えば、あの敗戦を敏感に受け止めている。

 2年生から正捕手としてマスクを被り、現在はキャプテンの草野晃伸が、夏の苦い記憶を呼び覚ましながら、試合での痛恨から芽生えた感情を紡ぐ。

「『3年生の夢を壊してしまった』という想いが本当に強くて。あの負けで『下級生の自分には責任感がなかったんだ』と考えて練習に取り組めるようになりました」

あの敗戦から何を学んだか

 草野をはじめ、ピッチャーも兼務する野手の磯圭太や4番の齋藤綾介など、主力を担う下級生が多かった。経験値の観点から論ずれば、新チームはより盤石となりそうではあるが、彼らにそんな慢心はなかった。

 磯の見識が物語る。

「個々の能力が飛び抜けているわけではないんで。ひとつの勝利に向かって全員野球で戦って上を目指していくっていうのが、自分たちの持ち味だと思っています」

 彼らが敗戦から学んだのが、そこだった。

 毛利元就の「3本の矢」ではないが、野球に置き換えれば絶対的な力を持つ選手でも、徹底マークを受ければ能力を発揮できないことも往々にしてある。一方で派手さはないが、それぞれの持ち味が束となれば、強者にも臆せず向かっていける――。

 草野の言葉が、そこに説得力を付加させる。

「下級生から試合に出ている選手は多いですけど、自分だけが抱え込むんじゃなくて、選手一人ひとりが『引っ張っていくんだ』って気持ちにはなっていると思います」

 監督が「戦力が高いわけではない」と評したチームは、そうやって新たな作新学院という土を丹念に耕していったのである。

葛藤からスタートした世代

 小針が補足するように説明する。

「下級生から出ていた選手としては、試合に慣れている部分はあるのかもしれませんけど、去年の秋は『本当に勝てるのか?』というような葛藤からスタートしたんですね。そこからチーム一丸となって戦うようになって」

 不安と向き合いながらも一歩ずつ前に進んだチームは、結果を残した。

 昨秋の栃木大会で優勝し、関東大会ではベスト8。夏の連覇が途絶えてすぐに帰ってこられた甲子園で、作新学院はチームの結束力を全国に印象付けたのである。

【次ページ】 作新が見せた「本当の全員野球」

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