「ベンチメンバー全員が、『いつでも出るぞ』って心構えがずっとあったから、接戦になっても最後は試合をものにできたんだと思います」

　4番の齋藤が満足げに頷く。そのスタイルは、最後まで貫かれた。

作新が見せた「本当の全員野球」

　山梨学院との準々決勝。3-10と大差をつけられた8回に投げたのは、それまでショートを守っていた磯だった。

　大分商戦でゲームを締め、英明との試合ではショートから2度マウンドに上がり115球を投げた二刀流は当初、準々決勝で投げる予定はなかったのだという。

「うちはピッチャーを繋いで勝ってきたチームだから、準備しておくように」

　監督からの言葉にチームの意志を刻む。1イニングを投げ2点を失ったものの、磯は「自分はピッチャーも野手も持ち味だと思っているんで、出られてよかった」と、晴れやかな表情で汗をぬぐった。

　作新学院は、山梨学院との試合でも16人がグラウンドで躍動した。

「力が拮抗しているなか、全員が戦力となって勝ちに貢献してくれました」

　18人全員で残した爪痕に目じりを下げながら、小針は春の一歩先を見据えていた。

「現時点ではこういう戦い方ですけど、夏に向けて個人がどれだけ能力を上げてくれるか。本物のレギュラーというか、一人ひとりが核となる選手に育ってもらいたいですね」

　春風に乗り、清々しく舞った、作新学院の全員野球。地盤が固まるチームはきっと、夏には力強い幹を根ざしている。

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