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女子マラソン日本歴代2位の新谷仁美が語る「シューズの性能を生かすために必要なものとは?」

posted2023/03/23 11:00

 
女子マラソン日本歴代2位の新谷仁美が語る「シューズの性能を生かすために必要なものとは?」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph by

Takuya Sugiyama

ヒューストンマラソンで日本歴代2位の記録でゴールした新谷仁美。その走りを支えてきたadidasのランニングシューズの魅力を本人が語る。

新谷式アディゼロの履き分け方

――昨年の東京マラソンでは、アディゼロ アディオス プロ 2を履かれていましたが、今回のヒューストンではアディゼロ アディオス プロ 3を履かれていました。いかがでしたか?

新谷 全くの別モノでした。ソールが柔らかくなって、より踏み込みやすく、反発を得られやすくなりました。ただ前への推進力が高いぶん、練習でしっかりと筋力をつける必要があるシューズだと思っています。

――練習では何を履いていましたか?

新谷 今回のマラソンに向けての練習では、アディオス プロ 3は試合を想定したポイント練習で3~4回履いたぐらい。ジョグや30km走など、練習の7~8割はアディゼロ SLです。市民ランナーの方であればレースでも履けるシューズですが、選手にとってはトップスピードを出すためのシューズというよりは、練習を積むためのトレーニングシューズという感じ。トレーニングは積むことが大切なのですが、SLは積む練習を任せられるモデルです。

 駅伝などの試合を想定したポイント練習はアディゼロ タクミ セン 9。実は私はこのシューズが一番好きです。カーブで足をちゃんと切り替えられるし、アップダウンにも対応しやすい。足の捌きもとても楽で、動きづくりをするのにもぴったりだし、レベルを問わずに履けるはずです。

 SLとタクミ セン 9は、レース後の休養期間を経て、筋力が落ちた立ち上げ段階の体でも、きちんと練習で必要なステップが踏めるシューズですね。

 レースはハーフマラソンやマラソンだったらアディオス プロ 3が結果につながりやすいですが、駅伝や5~10kmの試合や、初心者~中級者の方のレースにはタクミ セン 9がおすすめです。SLでしっかりと積む練習ができれば、アディオス プロ 3やタクミ セン 9を履いたときにこれまでと全然違う推進力を感じられると思います。

シューズの性能を生かすために必要なものとは?

――新谷選手は足底に怪我をしたこともありますし、どこでどんなシューズを履くか、ものすごくシビアに考えていますよね。

新谷 そうですね。今はシューズの進化がものすごいですが、人の体はそれにどこまで追いついているだろうと思ってしまうんです。単に良い靴を履けば速く走れるわけではなく、シューズの良さを自分の武器のひとつとして使えるように、考えてトレーニングをして、筋力をつけていく必要があります。そう考えると、ヒューストンマラソンでは、私はアディオス プロ 3を100%自分の武器にできていなかったなと思っています。

――レースが終わって、すぐに和田俊明コーチとミーティングされていたのを見て、新谷さんは自分の体に必要なこと、足りないものがこのレースで分かったのではないかと感じていました。

新谷 まず、カーボンの入った厚底シューズを履きこなすためには、前に進む筋力と下に押さえ込む筋力が必要です。ヒューストンに向けてその準備はもちろんしていたのですが、12月に初めてアディオス プロ 3を履いたときにうまくフィットしなくて、実はギリギリまでタクミ セン9を履くつもりだったんです。ただ、12月31日に試合を想定した最後の練習でようやく体がアディオス プロ 3にアジャストできたと感じて。マラソンで記録を狙うために作られたシューズということも知っていたので、急遽変更しました。

【次ページ】 アディオス プロ 3を武器にベルリンで日本記録を!

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