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「正捕手の定義が少しずつ変わってきています」DeNA伊藤光33歳に聞いた“勝負の1年”への覚悟「必要ならばキャッチャーではなくとも…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/02/20 11:00
宜野湾キャンプで練習に励む伊藤光。今年の4月には34歳となるプロ16年目の“ベテラン”に話を聞いた
「あくまでも昨年は参考記録程度の打席でしたが、僕としてはきっかけを掴めたシーズンでした。まずボールを長く見る。あとはポイントですよね。僕は今まで“点”でパチンと捉えるバッティングだったんですけど、昨年は“線”で捉えることを意識したんです。今は球速も速くなっていますし、小さく動くボールも多い。コンタクト率を上げるために、言い方は難しいのですが、ボールの後ろからバットをライン(球筋)に入れていく。イメージとしては“ボールを運ぶ”といった感じで振っています。何て言うのか、一生懸命なんだけど一生懸命振らなくなったというか。見た目はあまり変わらないんですけど、自分のなかではかなり大きく変わった1年でしたし、手応えもあったので、今季はこれをさらにいいモノにしていくのがテーマですね」
“一塁起用”をどう感じていたのか
そんな打力を買われてか、昨年驚かされたのはオールスター休みが明けてまもない8月3日の広島戦(横浜スタジアム)で7番・ファーストでスタメン出場したことだろう。オリックス時代以来となる5年ぶりの内野守備。スタメンが発表されたときハマスタには何とも言えないどよめきが起こった。
「オールスターのときぐらいに石井(琢朗)コーチから『ファースト行けるだろ?』という話をされて、僕としては勝つために試合に出たいので『行けます!』と返事をしたんです。いざゲームが始まるときは三浦(大輔)監督から『頼むぞ!』と、また相川(亮二)コーチからは『とりあえず楽しもう』と送り出してもらいました。グラウンドに立つと本当、久しぶりの感覚でしたね」
夏場は首位ヤクルトを猛追していたDeNA。首脳陣は、打数は少ないものの当時3割以上のアベレージを残し、加えて左投手に強かった(広島先発はサウスポーの床田寛樹)伊藤のバッティングに期待をしてのファースト起用だったのだろう。
捕手としての心境に変化があったのか? と聞くと…
そんな光景を見ていて、ふと思うことがあった。2018年7月、伊藤がトレードでDeNAに移籍してきた当初、オリックス時代の内野起用についてどう思っていたのか訊いたときのことだ。伊藤は言葉を選びながら「キャッチャーとしてこの世界に入って、ある程度経験を重ねてきていますから、基本的に“キャッチャー以外”というのは僕のなかではなかった」と、答えてくれた。
5年の月日が経った今、捕手としての心境に変化があったということなのだろうか。そう訊くと伊藤はしばし黙考し、口を開いた。