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「正捕手の定義が少しずつ変わってきています」DeNA伊藤光33歳に聞いた“勝負の1年”への覚悟「必要ならばキャッチャーではなくとも…」
posted2023/02/20 11:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
「毎年キャンプの時期は、自分への期待感と、今年はどうなるのかなって気持ちが混ざり合うんですよ。これは新人のときから変わりませんね」
プロ16年目、横浜DeNAベイスターズのベテラン捕手である伊藤光は、感慨深い表情でそう言った。何年プロで過ごそうが、この時期は高揚感と新鮮な気持ちが心を満たす。
“人とは違う左足”を持っているので…
気温25度を超す夏日も珍しくない沖縄・宜野湾キャンプ。守備の要として伊藤は、チームの中心で精力的に体を動かしていた。浅く黒く日焼けした精悍な顔には時折笑みが浮かび、いい状態でキャンプを過ごせているようだ。今季に向け伊藤は力強い口調で言う。
「とにかく、いいシーズンにしたい。個人的にはキャリアハイを残したい気持ちはありますが、それよりもとにかく体調面。チームから離脱しないことを一番に置きたい」
言葉の端々から切実さが伝わってくる。DeNAへ移籍をして今年で6年目になるが、とくに過去3年は足の故障により不完全燃焼のシーズンを過ごしている。昨季は春先に左足の張りで離脱し、出場したのは40試合。スタメンマスクはわずか25試合だった。
故障に関し苦慮していることに言及すると、伊藤の表情から笑みは消え、自分に言い聞かせるように語った。
「言い訳ではないのですが“人とは違う左足”を持っているので、より繊細に、気を遣わなければいけないんです」
若さでカバーできていたところが30歳を境に…
プロ2年目、オリックス・バファローズ時代に伊藤は椎間板ヘルニアの除去手術を受けている。その影響で術後は左足の力が入らず塗炭の苦しみを味わったが、懸命の努力によりレギュラーの地位を築き、ベストナインに選出されるほどの捕手に成長をした。しかし寄る年波には抗えず、伊藤は現実を突きつけられている。