「僕がルーキーのころと比べれば、実績も基礎的な部分もぜんぜん違うので単純にすごいなって思っていますよ。わからないことがあれば積極的に訊いてきますし、そういう点でも見どころがありますよね。期待値は高いし、将来は軸になる選手だと思いますが、ただまだスタートライン。これからいろんな経験をしていくと思いますね」

なにが一番悔しいかって優勝経験がないことなんですよ

　そう言うと伊藤は、ふと表情を緩めた。

「負けたくないっていうか何だろう、いろいろ教えながら一緒に頑張って行くって感じですかね」

　松尾が果たして経験豊富な伊藤ら先輩たちからなにを吸収し、成長していくのか今から楽しみだ。

　あと1カ月も経てば、2023年シーズンが始まる。伊藤としてはどんな日々を過ごすことができたらと考えているのだろうか。

「先ほども言ったように一番は離脱をしないこと。そして自分自身まだまだ成長できる要素があると思っているので、貪欲にそこを突き詰めていきたい。あと、それなりに経験や場数を踏んできましたが、まだ優勝したことがないので、ぜひ成し遂げたい。プロになってたくさん悔しい思いをしてきましたが、なにが一番悔しいかって優勝経験がないことなんですよ。逆にそのために今がんばれているというのもあるので、ピッチャー陣を生かし勝利に貢献していきたい。最後までその中心に……うん、もうそれだけですね」

一歩引いて全体を見渡すのも自分の役割かな

　諦めてしまえば、ほどなく終わる。だが諦めなければ、そこには無限の可能性がある。

「昨年リーグ2位になってあと一歩と言われますけど、その一歩の大きさを痛感したシーズンだったので選手全員の意識は以前とは違うはずです。キャンプの様子は本当に活発ですし、僕も若い選手たちに乗せられているような気持ちになりますからね。一応ベテランと呼ばれる年齢なので、そこは一歩引いて全体を見渡すのも自分の役割かなと思っています。勢いのある若手や実力のある中堅、そして冷静な僕や宮﨑（敏郎）さん、大和さん、（藤田）一也さんらベテランの力が合わさればきっといい結果が出ると信じているので期待しています」

　今季は2019年のオフに締結した4年契約の最終年。あらゆる意味で伊藤にとっては勝負の一年となる。これまで味わった悔しさを歓喜にするべく全身全霊をかけシーズンに挑む。

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