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箱根駅伝“まさかのシード落ち”から1年…6位・早稲田大はいかに復活したのか? 監督のリアルな本音「他大学に比べて資金的な面できつい」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byYuki Suenaga
posted2023/01/11 17:04
総合6位でのフィニッシュとなった早稲田大学10区の菅野雄太
それは【1=1】というものだ。
この単純な数式が意味するのは、「練習で力を付けて、それを本番で発揮する」ということだ。
「今まではセンスを磨くような練習が多かったと思うんですが、まずは基礎的な練習から始めました」
選手たちには“泥臭い練習”に映ったかもしれないが、花田監督は土台づくりから着手した。また、就任当初、故障者が多かったこともあって、故障しない体づくりにも力を入れた。
そのかいもあって、夏合宿では、故障者もなく、じっくりと走りこむことができた。それでも、上武大を率いていた時よりも設定タイムを落とし、練習量も少なめに課していたというが……。
「箱根駅伝はハーフマラソンの距離を走らなければいけないので“30kmぐらいを余裕を持って走れるスタミナが必要だ”と、私たちも瀬古さん(利彦、花田が学生時代にコーチだった)に言われていました。そういった練習をやってきました」
選手全員が、想定通りのタイムで走った
こうやって地道に作り上げた土台は強固になり、簡単には崩れなくなった。その成果は秋以降の早稲田の実績を見れば明らかだ。
10月の箱根駅伝予選会は、期待のルーキー山口智規が低血糖になる想定外の事態があったものの、きっちりと4位で予選を通過した。11月の全日本大学駅伝では、箱根を見据えて起用した選手が苦戦しながらも、6位に入りシード権を獲得している。
いずれもチーム目標には少し届かなかったが、ほとんどの選手が花田監督の想定通りのタイムで走っていた。
そして、今回の箱根駅伝もそうだった。
「往路、復路ともに、10区間ほとんど誤差がなかった。1区がスローな展開だったので1分半ぐらい遅かったが、【1=1】ができたと思います」
花田監督は総合タイムとして10時間53分台を想定していた。実際の結果は10時間55分21秒。確かに、1区がスローペースになった分の1分30秒を差し引けば、10時間53分台になる。まさに【1=1】の力を選手達が発揮した結果だった。
“一般入部組”が名門復活のカギを握る
また、今回、指定校推薦で入学した伊福陽太(2年)が8区、一般受験で入部した菅野雄太(2年)が10区で堅実な走りを見せた。強い時の早稲田は、彼らのような“一般組”の突き上げがあるのが特徴だ。下級生の彼らが、さらに力を付けていけば、いっそうチーム力は増すだろう。
まずはシード校に返り咲くことはできた。
しかし、真の“名門復活”と言うには、大きな課題を突きつけられたのも事実。つまりは、まだまだ優勝争いに加われる力がなかった。