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鈴木軍はプロレス界に何を残したのか? “やりたいこと”を貫いた鈴木みのると家族たちの11年「俺たちは、間違いなく、1番だった」 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2022/12/29 11:04

鈴木軍はプロレス界に何を残したのか? “やりたいこと”を貫いた鈴木みのると家族たちの11年「俺たちは、間違いなく、1番だった」<Number Web> photograph by Masashi Hara

12月19日、最後のタカタイチ興行で「イチバ~ン」の音頭をとるタイチ。葛西純と流血戦を演じた鈴木軍の“ボス”鈴木みのるも感慨深げな表情を浮かべた

鷹木信悟の称賛「今日の試合は東京ドームより重い」

 29分39秒にも及ぶ潰し合いを制した鷹木は「今日の試合と今日の勝利は、東京ドームより重い」と充実の表情を浮かべた。「レスラーは熱い戦いができれば最高の気分なんだよ!」と語った彼は、「あんたのおかげで有意義な1年だった。あんたのおかげで成長できたよ」とタイチへの感謝も口にした。

 タイチも、試合に敗れはしたものの充実していた。先に去った鷹木に「お前とやってきてひとつも間違いなかった。今日もここまで遠慮なく俺を叩き潰してくれてありがとう。感謝してる」とメッセージを送った。

 強さを求める観客は、必ずしも勝者にだけ強さを感じるわけではない。自身の願望を実現することや、全てを曝け出して堂々と戦うこと、結果を受け入れ、そこから再び前に向かって歩き出すこと……。勝者以上に、“強い敗者”に惹かれることもある。

 もちろん、タイチの悔しさは大きかった。「結局、俺は何にも残さなかった」。鈴木軍で11年過ごした集大成として、勝利という結果を得ることができなかった。しかし、ここまでの歩みで得たものは確かにそこにあったのだ。

 試合終了と同時に、倒れているタイチの周りにはTAKAだけでなく、あべみほ、エル・デスペラード、DOUKIが集まった。ランス・アーチャーと鈴木も、立ち上がるタイチをじっと見ていた。

 鈴木から「お前が締めろ」とマイクを渡されたタイチは、観客に問いかけた。

「俺らは何番だ? 鈴木軍が1番? 俺らは何番だ?」

 もちろん、答えはすぐにあちこちから返ってきた。

「じゃあ、今日だけ1番だ」

 タカタイチ興行のテーマ曲『Rowdy ~TAKA TAICHI~』(稲葉リノ)でも自分たちを「2番」としていた彼らが、最後に負けて1番になった。

「俺たちタカタイチ、イチバ~ン」

 1本だけ指を伸ばした手を掲げるタイチの後ろ姿を見ながら、鈴木も同じように手を上げた。

【次ページ】 「鈴木軍はチームではなく家族」が意味するもの

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鈴木みのる
TAKAみちのく
タイチ
ランス・アーチャー
エル・デスペラード
金丸義信
ザック・セイバーJr.
DOUKI
あべみほ
高橋ヒロム
鷹木信悟
葛西純
佐々木大輔
土井成樹
鈴木軍

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