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[2大会ぶりの躍進]オランダ「71歳ファンハールの思考法」
posted2022/12/24 07:02
text by
中田徹Toru Nakata
photograph by
Kenichi Arai
代名詞の華やかな攻撃サッカーこそ影を潜めたが、名将は経験の乏しい選手たちに自信を与えることに成功した。最後はPK戦で敗れるも、あの同点劇には確かな根拠があった。
「世界チャンピオンになりたい」
オランダの名将、ルイス・ファンハールはW杯を迎える前から何度も繰り返し目標を語っていた。
「優勝しなければいけない、と言っているのではない。オランダにも優勝する力がある、と私は言っているのだ。ならば、優勝を狙いにいかないといけないだろう」
そして彼は言う。「その姿をイメージするんだ」と。
オランダ代表は試合の2日前にレギュラーチーム対控えチームの紅白戦を行う。控えチームは仮想対戦相手として敵の選手やシステムを模倣する。今大会の準々決勝2日前にアルゼンチンのリオネル・メッシ役を務めたのはファンタジスタのノア・ランだった。
紅白戦でもファンハールは「イメージを作れ!」と叫ぶ。
レギュラーチームは自分の活躍する姿をイメージしたり、与えられたタスクを体と頭に定着させたりする。控えチームは試合に出たらどうするか、出場機会が無くても自身の役割は何か、とイメージする。オランダはその作業時間を、48時間設けていた。
グループステージ3試合で3ゴールを決めて脚光を浴びたコーディ・ガクポの愛読書の一つに『思考は現実化する』という1937年出版のベストセラーがある。これは著者ナポレオン・ヒルが500人ものインタビューから得た成功の極意を記したものだ。ターゲットを定めて、そこから逆算して日々を過ごすということも書かれている。ファンハールのメソッドはそれに近い。