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「久しぶりに出てきた左のパワーピッチャー」巨人6年目の井上温大(23歳)が覚醒…元中日の左腕エース・今中慎二が絶賛する「ピッチングの秘密」とは
posted2025/04/28 11:42

今季4試合に先発し2勝、防御率1.61の好投をみせている巨人の左腕・井上温大(23歳)
text by

鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
巨人の若き左のエースが本格的な覚醒を思わせるピッチングを見せている。プロ6年目の井上温大投手は4月22日の中日戦に先発、8回を投げて3安打1失点、自己最多となる14個の三振を奪う快投で今季2勝目を挙げた。前橋商から2019年のドラフト4位で入団。阿部慎之助監督となった昨年は開幕一軍に抜擢され、6月から先発ローテーション入りを果たすと8勝5敗と結果を残した。開幕ローテ入りした今季は、この中日戦まで4試合で2勝1敗、リーグトップの31奪三振をマークして防御率も1.61と山﨑伊織投手とともに投手陣を引っ張る両輪となっている。その左腕の魅力を同じサウスポーの立場から元中日の今中慎二さんに解説してもらった。
圧巻のピッチングだった。
14奪三振を記録した中日戦。初回に2死一、三塁のピンチを招いたが、そこをショートゴロで切り抜けると、真っ直ぐとスライダー、ツーシームにフォークボールとカーブを織り交ぜて中日打線を翻弄。5回に中田翔内野手のソロ本塁打を許したが、結果的には8回107球を投げて今季2勝目を挙げた。
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「去年も中日戦ではいいピッチング(先発4試合では25回3分の1で2失点)を見せていましたが、今年はキャンプで観たときから真っ直ぐの質がワンランク上がったなと思っていました」
左投手にまず必要なこととは…
昨年の井上のストレートの平均球速は145.9km。今季は中日戦まで同147.8kmと2kmほどスピードもアップしている。しかし今中さんが注目する真っ直ぐの質はスピードガン的な速さではないのだという。
「左投手のピッチングでまず必要なのは、右打者のアウトコースにきちんと投げられる技術です。左投手って右バッターのインコースによく投げるし、練習もする。でも一番大事なのはアウトコースに投げ切れるかどうかということと、そのボールの質なんです。外を狙ったストレートが、井上はほとんど中にスライドして入ってこない。多少、甘く入った球でも、そこから中に入ってくる球がないから、相手が打ちにきてもファウルになるケースが多いんです」
そこが大事だと今中さんは語る。