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“りくりゅう”がぽろぽろ流した涙…GPファイナル初優勝、三浦璃来&木原龍一の瞳から溢れた“パートナーへの思い”「ずっと不安でした」 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2022/12/13 11:00

“りくりゅう”がぽろぽろ流した涙…GPファイナル初優勝、三浦璃来&木原龍一の瞳から溢れた“パートナーへの思い”「ずっと不安でした」<Number Web> photograph by AFLO

GPファイナルのキス・アンド・クライにて、1位が確定した瞬間、思わず涙があふれた三浦と木原

「今日、僕自身8年ぶりくらいにサルコウをミスしてしまって、僕のせいで良い点を出せないんじゃないかという気持ちになってしまって。申し訳なくなってしまって、点数出るまで不安な気持ちが大きかったんです」。そう木原が言うと、三浦がこう続けた。

「私も同じく自分のジャンプとスロウのミスで、相手に申し訳ないなという気持ちがあったので、点数待ちの間はずっと不安でした」。二人の涙は、安堵の涙だったのだ。

 二人の答えをリモート通訳が英語に訳し終えると、両隣に並んでいたアメリカのペアとイタリアのペアは、少し感じ入ったような神妙な表情になった。

ペア競技という運命共同体

 ペアやアイスダンスなどのカップル競技をやっていれば、演技中は運命共同体になる。パートナーのミスが原因で負けることも、逆に相手のおかげで勝てたということもあるだろう。だがそれは、お互い様のこと。西洋人のカップルは、そのあたりは割り切っているように見える。

 三浦と木原の二人の、失敗するとまず「パートナーに対して、申し訳ない」という気持ちは、「人様に迷惑をかけてはいけない」と教えられて育つ日本人特有の、良い意味でとても日本人的な考え方だと思う。

 二人を見ていると、その相手に対する責任感こそが、二人のパートナーシップの鍵でもあり、絆の強さでもあるのではないだろうか。逆に言うなら、相手がいるから、相手のためにも頑張ろうという気持ちが強いということだ。

「僕が本来ならば、(フリーのあった)昨日は助けてあげなければいけない場面だった。僕のほうが(失敗)してしまって。本当に(優勝決定は)数点差の勝負になるかなと思っていて。練習から璃来ちゃんのジャンプの調子が良かったので心配ないかなと思っていたんですが、璃来ちゃんが本当に頑張ってくれたのに、申し訳ないことをしたという思いがあって、自分への不甲斐なさを感じました」

 木原は年長者らしく、そうパートナーへの思いやりの言葉を口にした。

【次ページ】 特別な緊張…しかし2人は「質の高い練習をしてきた」

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