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しゃがみこむ木原に三浦が寄り添い…“りくりゅう”ペアがお互いに抱いていた“不安”「初めてプレッシャーと戦う経験に」<GPファイナル初優勝>
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/12/12 17:00
フリーの演技を終え、思わず顔を近づける2人。演技直後、お互いに抱いた感情は相重なるものだった
互いに語りかけるような2人の表情
期待は周囲からではなかっただろう。これまで「日本初」をいくつも成し遂げ、歴史を塗り替えてきた。さらに足を進めたいという思いもあったことも、重圧につながった。それがミスにつながった。一人のミスであっても、ペアではGOE(できばえ点)でのマイナスにつながるため、両者それぞれのミスは得点にそのまま直結する。
でも、崩れることはなかった。後半、2つのスロージャンプを決め、リフトでもレベル4を獲得。目をひいたのは、時間が進むにつれて発揮された伸びやかなスケーティングと、直接言葉をかわせなくても互いに語りかけるような2人の表情だった。
しっかり者と抜けているところを補うところが合っているかな
2019年の結成以来、短期間で驚くほどの進化を遂げた要因を、11月のNHK杯のときに木原がこう語っている。
「1つめがスケーティングのタイプが似ていることです。一歩目の踏み出し、氷の滑りが似ていて、無理せずトップスピードに入れます。2つめはとにかく2人ともスピードが好きで、スピードがなければ怖いというくらいなので合うのかな、と。そして人間的な性格、バランスがいいのかなと思います。しっかり者と抜けているところを補うところが合っているかなと思います」
ファイナルで支えになったのも、スケーティングの相性、互いの相性のよさという2人ならではの強みだった。そしてミスを最小限にとどめ、優勝につなげたのは2人が培ってきた地力の高さの表れでもある。涙のあとの感慨深いかのような表情は、重圧と闘って得たからこそであるように思えるし、1つ前へ進むことができたからこそでもあるようだった。