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11月開幕に中3日の連続、メンバー増…日本サッカー界の第一人者が語る、異例ずくめのカタールW杯を勝ち抜くコンディショニング術 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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posted2022/11/15 11:00

11月開幕に中3日の連続、メンバー増…日本サッカー界の第一人者が語る、異例ずくめのカタールW杯を勝ち抜くコンディショニング術<Number Web> photograph by AFLO

ロシアW杯のトレーニングで選手と一緒に走る早川氏。1963年生まれの59歳だ

――日本代表の強みは7大会連続のノウハウ。前回のロシア大会でも選手の疲労度を徹底的にチェックできたことが大きかったと思うのですが。

「コンディショニングについて、大きな転機となったのは2010年の南アフリカワールドカップです。それまでは選手との会話や体重の変化、マッサージ時の筋肉の状態などから疲労度を推察していましたが、高地での開催となった南アフリカ大会では、高地対策のエキスパートである三重大学(当時、現在は日本体育大学)の杉田正明さんに帯同いただき、血液検査、尿検査など客観的な指標と主観的な指標を合わせて、疲労度を推察しました。以降の大会ではそれらがベースとなり、さらに試行錯誤しながら現在に至っています」

――たとえば血液検査だとどんな頻度で、また、どの数値を見るのですか?

「基本的には試合の翌々日に実施してCK(クレアチンキナーゼ)を見ていました。この数値が高いと筋肉のダメージが強いと判断して、監督がトレーニング負荷を考える上で参考にしてもらいました。ロシア大会では6項目をチェックして、メディカルスタッフとも意見交換しながら疲労度を推察し、西野(朗)監督に報告しました。

 客観的な指標でも主観的な指標でも個人差があり、本大会でのコンディショニングをイメージして時間をかけて基準値をつくっていくことが重要です。今大会のスタッフもこれまで積み重ねてきた経験に基づきしっかりとした準備をしていると思います」

中3日の連続をどう戦うか

――ロシア大会は初戦のコロンビア戦から2戦目のセネガル戦が中4日で、次のポーランド戦、ラウンド16のベルギー戦が中3日での試合でした。今回はグループステージだけで言うと、すべて中3日になります。

「4日間と3日間の準備では、次戦へのアプローチも変わってくると思います。4日間の場合、先発メンバーは最初の2日間を回復にあて、残りの2日間で戦術を確認していくことが可能となりますが、3日間の場合、どうしても戦術的なトレーニングの時間が限られてしまいます。すでに今大会グループステージのチームスケジュールは完璧に組まれているとは思いますが、次試合会場への移動のタイミング、方法などもあらゆる面から検討しなければなりません。

 その点、森保一監督がロシア大会を経験しているのは大きなアドバンテージになると思います。監督や松本良一フィジカルコーチ、メディカルスタッフらがどういった決断をしたのか、私自身とても注目している部分です」

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