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「ごくろうさん」オリックス宮城大弥の日本一を恩師・我喜屋優(72歳)も喜ぶ「みんなで育ててきた。謙虚だから伸びたんだと思いますよ」
text by
前田泰子Yasuko Maeda
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/11/09 17:03
日本シリーズでは2試合に先発したオリックス宮城大弥(21歳)。大舞台での活躍を、興南高校時代の恩師・我喜屋優監督に振り返ってもらった
2019年夏、高3の沖縄大会決勝。延長13回、3時間49分に及ぶ激闘となった沖縄尚学との対戦で宮城は1人でマウンドに立ち続けた。安打を打っても一塁まで走る力もないほど体力を消耗しながらも、延長まで140キロ台の速球を投げ続け、投球数は229球。結果は228球目が押し出し四球となり敗れた。
それでも炎天下のマウンドで表情を変えず黙々と投げ続けた宮城の姿は観客の心を打ちスタンドから宮城へ拍手が起こった。視察していたスカウトでさえ「胸が熱くなった」と心が動かされたほどだった。
「あそこまで投げさせた監督も監督だけど。変えるタイミングじゃなかったんです。『頼むからお前の力で勝ってくれ』と言うしかなかった。押し出し四球の場面は追い込んで、ど真ん中に変化球を投げ込めば抑えられたと思うけど、真っ直ぐで締めたいというバッテリーの強気が出てしまいましたね」
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強気の1球で宮城は3年連続の夏の甲子園を逃すことになった。だが、マウンドで見せた精神力は今後の活躍を期待させるものだった。
名将・我喜屋が考える“投手の条件”とは?
初めて見たときから我喜屋監督は非凡なものを感じていたという。宜野湾ポニーズの練習を見に行ったとき「この子は面白いですよ」とチームの監督から紹介されたのが宮城だった。
「上背はないけど力がありそうだと。コントロールもいいし、筋力をつけるとまだまだ伸びしろがあるとわかった。社会人の監督までやった経験からも、使えるピッチャーというのは感じるものがあるんですよ。何よりも野球が大好きで、投手の条件が備わっていた」
我喜屋監督の考える投手の条件は体力、技術、メンタル、自分を冷静に分析できること。そして野手が守りやすいことだという。
「コントロールが良くてテンポが速いから野手が守りやすかったし、球種が多彩で力のあるバッターを腰でスイングさせなかった。プロでもそれができている。プロの打者は力があるけど腰の入ったスイングをさせていないよね」