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那須川天心vs.武尊はなぜ歴史的な名勝負になったのか? 格闘技アンケート1~3位を分析「桜庭ホイス戦のような試合はもう生まれない」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byTHE MATCH 2022/Susumu Nagao
posted2022/10/26 17:04
地上波放送は消滅したものの、PPVで驚異的な売上を記録した『THE MATCH 2022』。格闘技の新たな時代の幕開けを告げるイベントとなった
格闘技ブーム全盛期のカリスマ対決
そして第3位には、魔裟斗vs.山本“KID”徳郁が選ばれた。ときは2004年12月31日、大阪ドーム。ちょうど1年前にはフジテレビ、TBS、日本テレビがそれぞれ別個の格闘技イベントをゴールデンタイムに中継し、熾烈な視聴率戦争を繰り広げていた。
勝利を収めたのは、ボブ・サップvs.曙というメガトン級のマッチメークで勝負に出たTBSの『K-1 Premium 2003 Dynamite!!』だった。元横綱・曙の格闘技転向初戦となった同試合は瞬間最高視聴率43%を記録し、NHK『紅白歌合戦』をも上回った。
翌年、日本テレビは降りたが、フジ系との視聴率戦争は残っている。そこでK-1は、中量級で絶大な人気を誇っていた魔裟斗に、同じ中量級でもMMAファイターとして若者層から絶大な支持を得ていたKIDをぶつけるという、ふたりのカリスマによる異種格闘技戦を切り札にした。
ルールを超越した夢の対決に世間は大沸騰。しかも立ち技のK-1ルールで争われたにもかかわらず、先制のダウンを奪ったのはルールに不慣れなはずのKIDの方だった。結局2Rにハイキックでダウンを奪い返すなど中盤から追い上げた魔裟斗が薄氷の勝利を収めたが、最後まで勝負の行方がわからない一進一退の攻防に世間は酔いしれた。
ビデオリサーチの調査によると、この一戦の瞬間最高視聴率は31.6%。対照的に、裏番組の『紅白歌合戦』は史上最低の視聴率を記録したという。振り返ってみれば、格闘技が最も世間に浸透した時代だったかもしれない。
ベスト3に選ばれた試合の共通項とは?
ベスト3の共通項は、いずれも東京ドームなどの大会場で開催されたビッグイベントで組まれているという点だ。観客動員が3~5万人規模の試合であることに加えて、PPVにせよ地上波放送にせよ、リアルタイムで多くの視聴者の目に触れたことも要因のひとつだろう。
振り返ってみれば、戦後開局間もない頃には街頭テレビ(まだ一般家庭にテレビ受像機は高嶺の花だったので、駅前広場などに受像機が設置され、それを視聴するために何万という人々が群がった現象)によってプロレスが爆発的に普及した。戦後のボクシングも地上波抜きに語ることはできない。格闘技の源流といえる1970年代のキックブームも、最盛期には地上波4局による週1回のレギュラー放送によって時代を彩った。
数年前から映像の主流は放送から配信に移行したが、いつの時代も格闘技には「大きなハコと多くの視聴者」の存在が欠かせない。「これぞ!」というべき次なるベストバウトも、数万人の観客で埋め尽くされたドーム球場を舞台に生まれるのか。
<#1、#2から続く>
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