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《独占インタビュー》大迫傑31歳に問う! プロランナーなのに、なぜニューイヤー駅伝を走る?「勝つためだけでは僕の色は出せない」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byShota Matsumoto
posted2022/10/08 11:02
プロランナーとしてGMOインターネットグループに「参画」し、ニューイヤー駅伝を走ることを表明した大迫傑。その真意とは?
「ずっとひとつのチームの中で活動していると、どうしてもその中での序列とか、選手同士のマウンティングだとか、"外的要因"によって成功の尺度が決められてしまうことがあります。組織って、そういう部分がありますよね。でも、そうするとランナーというか、人間としての内的成長がおろそかになってしまうことがあるんです」
タイムが出なければ、走らないという選択肢
内的成長こそ、ランナーとして成長するために重要な力になるものだという。アメリカでトレーニングを積み始めた当初、大迫もそうしたプロセスを経験した。
「トレーニングが順調に行かなければ、タイムは出ません。タイムこそが外からの評価の尺度になりますから、タイムが出ないんだったら、走らない方がいいという選択肢も出てきます。でも、僕の経験では、強くなるための過程で、練習をやり切ってスタートラインに立つことの価値も、すごく重要なんです。これが内的成功です」
実際、大迫のアドバイスを受けて成功した選手もいる。GMOインターネットグループに所属する吉田祐也だ。大迫は吉田と共に練習を重ねる時期を持つが、自分が過去に抱えた葛藤を吉田が抱えていることに気づいたという。
「やっぱり、厳しいところでは逃げたくなるんです。でも、そこで向き合うことで内的成功を得られることもあるわけです」
優勝請負人であり、メンターとしての側面も
吉田は10月2日に、アメリカの「ツインシティーズマラソン」に出場し、2時間11分28秒で優勝した。タイムだけ見ると、物足りないかもしれない。しかし、そこには内的成長があったはずだと大迫は話す。
「2時間11分台のタイムだったので、メディアからは大きな注目を集めなかったかもしれません。それでも、今回のプロセスを見れば、苦しいところで逃げずに練習に取り組んだことで、彼は内的成功を収めてるんです。僕も同じようなプロセスを経たことがあり、それが次につながりました。こんなふうに自分の経験から導き出されたことを選手たちに伝えていけたらと思っています」
大迫の話を聞いていると、今回の契約が、優勝請負人的な要素もありつつ、後輩たちのマインドセットの方向性を示すメンターとしての側面を期待されたものであることも浮かび上がってくる。