そして見逃せないのは、大迫の参画は熊谷代表の「情熱」が生み出したものだということだ。記者会見で、熊谷代表はこう話した。

「ニューイヤー駅伝で我々が戦っております会社はみなさまご承知の通り、日本の大企業です。自動車メーカー様、あるいは重化学工業、みなさまご存知の会社が並んでいるわけです」

　具体的な企業名は挙げなかったが、車といえばトヨタ自動車であり、Hondaであり、重化学工業といえば旭化成のことが思い浮かぶ。これらの大企業とGMOインターネットグループの売上、利益規模は5倍から100倍違うという。

「そうした巨大な相手を短期で打ち負かし、圧倒的なナンバーワンの地位を獲得したい」と代表は話した。これだけニューイヤー駅伝で優勝したいという思いを公の場で伝えた企業のトップを、私は知らない。

GMOインターネットグループの記者会見に出席した（左から）安田昌史グループ副社長、熊谷正寿グループ代表、大迫傑、陸上部の亀鷹律良監督、原晋駅伝ディレクター　©︎Miki Fukano

　この情熱が、大迫の参画につながったのだろう。ただし、大迫は単に走るだけでは価値が創造されないと考え、実際に断ってきた。今回、パートナーシップを結んだのは、お互いの着地点が見つかったからだろう。

「”第4の道”が開けてもいいと思っているんですよ」

　ニューイヤー駅伝が、箱根駅伝に比べて「熱」が低かったのは、各チームの熱が内向きのものであり、外部の人間には伝わりにくかったことが大きかったと個人的に思っている。

　今回、GMOインターネットグループのニューイヤー駅伝に懸ける熱が、大迫を動かしたことで、ひとつの物語が生まれようとしている（11月3日に行われる東日本実業団対抗駅伝で12位以内に入ることがニューイヤー駅伝の出場のための条件ではある）。

　大迫はインタビューの最後に穏やかな表情で、こう語った。

「とにかくはじめての取り組みですが、やってみることで、僕の選んだものとは違う“第4の道”が開けてもいいと思ってるんですよ」

　大迫とGMOインターネットグループがどのようなストーリーを生むのか、今年の実業団駅伝は例年とは違った熱を生みそうだ。
 

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