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「誰にも手出しできないようなコンビになってます」栗田徹調教師が語る“タイトルホルダー&横山和生”が「阿吽の呼吸」になるまで 

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齋藤裕(NumberWeb編集部)

齋藤裕(NumberWeb編集部)Yu Saitou

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posted2022/10/02 11:01

「誰にも手出しできないようなコンビになってます」栗田徹調教師が語る“タイトルホルダー&横山和生”が「阿吽の呼吸」になるまで<Number Web> photograph by photostud

6月の宝塚記念を制し、凱旋門賞挑戦を決めたタイトルホルダー。栗田徹調教師に出会いから凱旋門賞に挑戦するまでの話を聞いた

栗田 2歳の7月17日に入厩し、ゲート試験も受かって結構動きも良かったです。ただ当時思っていたのは、節々もそうですし、全体的に弱そうなところがあるなと。それを見逃して調教をやっているとどこかに支障が出そうだなと思い、体全体のベースアップを図るため、放牧に出しました。

――母のメーヴェと似ていたところはありますか?

栗田 気持ちを前に出して走るというのは似ていますね。メーヴェもですが、特に若い時は気持ちが前に出すぎて、体がついていかないという印象でした。ただ、それは競走馬の本能だと思いますし、その気持ちがないとこういう成績にはつながらないとも思っています。

横山和生&タイトルホルダーは「今はもう阿吽の呼吸」

――10月に新馬戦を勝利し、皐月賞2着、ダービーは6着と同世代の強豪と競り合いましたが、トップには届きませんでした。ただ、菊花賞は逃げて5馬身差で初のGI制覇。今年に入ってからは3戦3勝と負けなしですが、振り返ると一番苦労した時期はいつになりますか?

栗田 昨年末から年明けくらいにかけて気性の難しさに悩まされることはありました。5着となった有馬記念の2週前追い切りでの放馬だったり、厩舎の中でトモを痛めたこともあったりして。先ほど話したような走りたい気持ちが出すぎてしまい、コントロールがなかなか利かない状態でした。

――どうやって立て直したのでしょうか?

栗田 男の子で強い者、上の立場の者に従うという本能がありますから、止まる動作をしたらちゃんと止まるように改めて躾(しつ)け直しました。レースでも悪い癖があると、イレギュラーな部分が出てしまうおそれがある。犬の「待て」の躾ではないですが、ひとつひとつ我慢を学ばせて、厩舎スタッフや(主戦の)横山和生ジョッキーとも連携しながら、すべき動作をきちんと教えていきました。

――昨年の有馬記念からコンビを組む和生ジョッキーとタイトルホルダーをどう見ていますか?

栗田 最初、有馬記念で乗る時は「どういう馬なんだろう」と彼の中でワクワクした気持ち、そしてまだわからない部分があったと思います。ただ調教やレースで一緒に時間を重ねて理解を深めていき、今はもう阿吽の呼吸というか、宝塚記念を見てても誰にも手出しできないようなコンビになってますよね。宝塚記念の追い切りを見ていても、本当に一体となった姿が見れたので、もう有馬記念の時とは全然違います。彼とはざっくばらんに話すことも多く、日経賞(GII、クビ差で1着)のときなんかは、感触は同じで「(状態としては)まだまだかなあ」なんて話をしていましたね。菊花賞制覇に導いてくれた(弟の)武史騎手もこの馬のことを見守ってくれていますし、有馬記念の後、阪神大賞典に使おうか迷っていたときには、和生騎手の父・横山典弘騎手からの進言もあって日経賞にしました。どん底まで落ちた和生騎手が努力を重ねてきた姿を僕含めみんな知っていましたから、こういうコンビが生まれて、そうやって横山家みんなで注目してくれて、活躍を喜んでくれているというのは嬉しいことです。

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#2に続く
「一応登録しとくか」から「行くなら直行だ」 タイトルホルダー栗田師が明かす凱旋門賞挑戦の舞台裏「簡単に勝てる舞台とは思っていない。ただ…」

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