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「誰にも手出しできないようなコンビになってます」栗田徹調教師が語る“タイトルホルダー&横山和生”が「阿吽の呼吸」になるまで
posted2022/10/02 11:01
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
photostud
淡々とした口調でそう語るのは、タイトルホルダーを管理する栗田徹調教師だ。天皇賞・春、宝塚記念と立て続けに制したGI3勝の4歳牡馬は本日2日の夜、日本馬が未だ成し遂げていない凱旋門賞の制覇に挑む。2日朝のJRA単勝オッズでは1番人気に推された日本期待のスターホースを送り出す栗田師に、「タイトルホルダーとの出会い」と「これまでの成長過程」を聞いた(インタビューはフランス渡航前の9月に行いました、単勝オッズは日本時間2日午前9時の時点)。全2回の前編/後編は#2へ
もし落としたらやってもらえますか
――タイトルホルダーとの出会いを教えてください。
栗田徹(以下、栗田) 2018年の当歳(0歳)のセレクトセールで岡田牧雄社長(岡田スタッド代表)、山田弘さん(馬主)、私の父(義父の栗田博憲さん、当時調教師)と4人でタイトルホルダーが歩くところを見ていたんです。一緒に見ながら、山田さんがセリで落としたいという話になり、「もし落としたらやってもらえますか」というふうに声をかけてもらいました。ドゥラメンテの初年度産駒だったので、どうなるだろうと思っていましたが、セリ(落札金額は2000万円)で山田さんが手に入れ、管理することになりました。
――なぜ徹さんの厩舎に?
栗田 父が定年間近だったんです(2019年2月28日引退)。山田さんが父の厩舎に預けていた縁もあり、自分が父の厩舎で調教助手をしていた時に母のメーヴェも見ていたことを知って、山田さんの所有馬は初めてだったのですが、メーヴェの2018(のちのタイトルホルダー)を自分の厩舎で預かることになりました。
この子は大きくなるのだろうか? 大丈夫だろうか?
――姉はJRA史上最少体重勝利馬(338kg)でも知られるメロディーレーンです。タイトルホルダーの当時の印象はどのようなものだったのでしょうか?
栗田 姉が小さく、まだオープンも勝っていなかったので、その残像があり、この子は大きくなるのだろうか? 大丈夫だろうか? とは思っていました。ただ歩いている姿がバランス良く、顔つきも賢そうで。セリの会場でしたけどお母さんの近くでトコトコ大人しく歩いて、あんまり動じることのない馬だなという印象でした。
――厩舎で見ていた母メーヴェはどのような印象の馬でしたか?
栗田 本当に鮮明に覚えているのが、(岡田)牧雄さんが海外から買ってきて、日本に着いた時、「この馬はすごい良い」と絶賛していたこと。牧雄社長は、どの馬も「いいよ」というところはあるんですが(笑)、メーヴェに関してはどこか独特な響きがありました。
母のメーヴェは繊細な部分がある馬
――義父の博憲さんと牧雄さんも長い付き合いだそうですね。
栗田 80年代、父がカリフォルニアの競馬場のパドックで米国修業中の牧雄さんと出会ってからの付き合いでとても仲が良いんです。父の背中を押すというか苦楽をともにしながら支えになっていた存在で、妻が小さい頃から北海道に泊まりにいったり、自分の結婚式にも出席いただいたりと家族ぐるみの付き合いですね。その牧雄社長が「すごい」という一頭なので気になる存在でした。
――実際、調教助手として接したメーヴェはどのような印象でしたか?