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スターライト・キッドが泣いていた「私の見せどころももっていかれて…」スターダム人気レスラーが隠せなかった“コンプレックス”の正体
posted2022/07/30 11:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
スターライト・キッドが泣いていた。覆面の下の表情がはっきり分かるくらいの号泣であり、悔し泣きだった。
7月9日のスターダム・立川ステージガーデン大会。恒例のリーグ戦5★STAR GPを前にしたビッグマッチで、彼女は上谷沙弥が持つ“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王座に挑戦した。
白いベルトに挑戦するのは3度目のことだ。昨年はヒールユニット大江戸隊に加入し、“闇堕ち”するとハイスピード王座、アーティスト・オブ・スターダム(6人タッグ)王座を獲得。それぞれ8度目、7度目の挑戦での戴冠だった。
だがワンダー王座に関しては「そこまで時間をかける気はない」と語っていた。今の自分にはそれだけの力があると確信していたのだ。実際、ハイスピードも6人タッグもベビーフェイス時代には獲ることができなかったベルトだ。今年3月には渡辺桃をパートナーに、タッグベルトを4度目の挑戦で巻いた。大江戸隊の、ヒールの自分だからできることがある。あくまでキッドは強気だった。
ハイフライヤーといえば、もともとはキッドのことだった
上谷戦に向け、新しい技も用意した。足を中心に狙う複合関節技「黒虎脚殺」。チャンピオンは難易度の高い飛び技フェニックス・スプラッシュという絶対的フィニッシュを持ち、他にも飛び技を得意とする“ハイフライヤー”だ。その脚にダメージを与えて飛べなくさせるという作戦だった。黒虎脚殺を初披露した試合で、キッドは「不死鳥(上谷)はもう飛べなくなるな」と宣告している。
場外でのイス攻撃も上谷の脚を狙うなど、キッドの試合運びは徹底していた。ヒールだからこその攻めであり、同時に“プロレスだから許される反則”はあくまで勝つために使われた。
ヒールだから悪いことをするのではなく、勝つため、白いベルトを手にするためにあらゆる手段を講じた。足4の字固め、さらに黒虎脚殺で上谷に悲鳴をあげさせる。ラ・ケブラーダや旋回式ボディプレスなど、飛び技も随所で使う。スターダムのハイフライヤーといえば、もともとはキッドのことだった。