さらけ出した“コンプレックス”の正体

　キッドにとって上谷は歳上の後輩。キャリア約7年のキッドだが、まだ上谷に勝ったことがない。号泣しながら出てきた言葉からも、ずっとそれを気にしていたことが分かる。リーグ戦、トーナメント、それに新日本プロレス・東京ドーム大会のスターダム提供試合でも上谷に負けた。スターダムのハイフライヤーというイメージも奪われた。

ラ・ケブラーダを放つキッド。上谷には同じハイフライヤーとしても負けたくなかった

「私が一番負けたくない相手が上谷沙弥なのに……」

　後輩に抱く、いわばコンプレックスをキッドはさらけ出した。ヒールとしての“キャラ”も何もない。ただただ本音が溢れ出た。

　感情のコントロールを失った状態だった。だが「思わずさらけ出してしまう本音」まで含めてプロレスラーの魅力なのも間違いない。キッドはこの負けで、強気一辺倒とはまた違う顔をファンの心に残したと言っていい。キッドと上谷、ライバルとしての“関係性”も伝わった。キッドの言葉と涙が伝えたのだ。

　両者は5★STAR GPでも同じブロックに入っており、7月31日の開幕2大会目で対戦する。2人にとっては、これが大事なリーグ初戦。ファンは立川でのタイトルマッチを踏まえ、物語の続き、その重みを噛み締めることになるだろう。

試合直後から涙を抑えられなかったキッド。上谷とは5★STAR GPでも対戦する

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