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林下詩美“復活宣言”のウラで…新設発表「IWGP女子王座」と朱里が保持するスターダムの頂点「赤いベルト」はどちらが上なのか?
posted2022/08/02 17:06
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
林下詩美は残り時間4秒、朱里から3カウントを奪うと、かすかな笑みを浮かべて叫んだ。
「朱里からはじめてピン・フォール取ったぞ!」
昨年は決着のつかない死闘を繰り返した林下と朱里だったが、暮れの12月29日の両国国技館大会で王者だった林下は赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)を朱里に奪われてしまった。
2022年の林下は女王としての緊張の糸が切れてしまったのか、平常を装っていたが明らかにトーンダウンしていた。目の輝きもなかった。赤いベルトを失ったことが、こうも林下を変えてしまったのかと筆者は感じていた。
それだけ王者としてのプレッシャーが続いていたということなのだろうが、スターダムの「クールで格好いい女」は、その格好よさをも少々欠いていた。ポジティブに解釈すれば、それも林下にとって必要な休養だったのかもしれない。
「たった今から林下詩美、復活します」
7月31日、大田区総合体育館。15分という公式戦の時間は2人には足りないかな、とも思ったが、14分56秒。林下はハイジャック・バックブリーカーからのパワーボムで朱里を押さえ込んだ。
「林下詩美が、現ワールドチャンピオン、そして最大のライバル朱里から初のピン・フォールを取りました。年末に赤いベルトを取られてしまって、それから私はずっと個人の活躍は何もできなかったけれど、今日の『5★STAR GP』、ただの公式戦だと思っていません。赤のチャンピオン朱里から取ったんです。残りまだまだ試合はたくさんあるけれど、まだまだ死闘もたくさん残っているだろうけれど、この林下詩美が大復活します!」
林下がメインイベントに帰ってきた。
「さすがは赤のチャンピオン様だよ。メチャメチャ強かった。でも、今日この大田区、最後に立っていたのは林下詩美です。去年の年末、朱里に赤いベルトを取られてから輝きをまったく放てなかったけれど、たった今から林下詩美、復活します。こんなに痛いのに、辛いのに、まだ『5★STAR GP』は2戦しか終わっていません」