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「スケボーが出来る子に演技レッスン」「優しすぎない女子アナ妻」話題ドラマ『オールドルーキー』脚本家が明かす制作秘話
text by
木俣冬Fuyu Kimata
photograph byTBS
posted2022/07/31 11:02
現在放送中のTBS日曜劇場『オールドルーキー』。Jリーガーだった主人公の“セカンドキャリア”を描く今までになかった新しいドラマの制作秘話を脚本家の福田靖さんに聞いた
『ザ・エージェント』から四半世紀を経て、日本でもようやく注目されるようになったスポーツマネージメントをモチーフにした『オールドルーキー』の魅力は人間ドラマである。従来のスポーツドラマのような試合に勝つためのストーリーではなく、選手を陰でサポートするスポーツマネージメントの仕事とそれにまつわる人間たちの姿を描くことに力を注ぐ。こうすることで見る者を選ばない普遍的な作品になった。
勝負に囚われない“人間ドラマ”にこだわる理由
「見ると前向きになれるドラマと言われています。スポーツドラマはどうしても試合がメインになり、勝つか負けるかのドラマになりがちですが、『オールドルーキー』はそれとは違う形でドラマを帰結させようと考えました」
主人公たちスポーツマネージメントの仕事を描くために各回、様々なスポーツ選手が登場する。サッカー、スケボー、ゴルフ、マラソン……とバラエティー豊か。それゆえ、苦労も多い。
「ドラマになりそうなスポーツを選んでそこからドラマを考えるのは大変なんですよ……。例えばマラソンやスケボーをモチーフにしてどのようにオリジナリティー溢れるドラマができるのか。僕は小学生のとき卓球を、いまは趣味でゴルフをやっているくらいで、スポーツ経験が少ないし、専門的な知識がありません。『未来への10カウント』のボクシングもドラマをやることになって練習に行った程度です。だから取材が大変です。そもそもスポーツは映像化することも大変ですからね。『オールドルーキー』では、スタッフの方々が見事に形にしてくださって感謝しています」
スポーツを再現することが難しいからマネージメントにスポットを当てたわけではない。その証拠に、第1話からいきなりサッカー日本代表の国際試合を大スケールで再現してみせた。また、第2話のスケボー編ではスケートボードができる子に特別な演技レッスンを行って起用した。
「野球やサッカーと比べるとまだまだ一般の認知度は低いスケボーを取り上げることができたのは、東京オリンピック2020を経たからでもあります。オリンピック種目にスケボーがあったおかげで視聴者のかたにも興味を持ってもらえると踏み取り入れました。実際、東京オリンピックのスケボー女子決勝でトリックに失敗した岡本碧優選手をライバル選手たちが担いで運んだ姿は印象的に感じた視聴者の方も少なくないと思うんです。僕もど根性スポーツものとの違いを感じておもしろいと感じました。しかも優勝した西矢椛さんが13歳という若い世代だったことも新鮮で、なんとも言えない爽やかさがありましたよね」
スケボー選手に取材した福田さんは「(他の選手は)ライバルじゃない、友だち」「スケボーの楽しさは世界中に友だちができること」というようなセリフを思いついた。幼い天才スケーターが親にやらされている、という状況も取材をもとに取り入れたという。
また第1話で登場したドイツリーグに所属するサッカー選手・矢崎(横浜流星)が契約するとき強気のキャラを作ってオンとオフを切り替えている設定も取材の成果だ。