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「スケボーが出来る子に演技レッスン」「優しすぎない女子アナ妻」話題ドラマ『オールドルーキー』脚本家が明かす制作秘話
text by
木俣冬Fuyu Kimata
photograph byTBS
posted2022/07/31 11:02
現在放送中のTBS日曜劇場『オールドルーキー』。Jリーガーだった主人公の“セカンドキャリア”を描く今までになかった新しいドラマの制作秘話を脚本家の福田靖さんに聞いた
「取材したスポーツバックスというマネージメント会社の澤井芳信社長がまだ見習いだったとき、元アスリートの経営する飲食店の厨房の手伝いを『それも仕事だ』と言われてやっていたという話を聞いて、新町が佐々木主浩さんの焼き肉店・肉の大魔神で働くアイデアを思いつきました。さらに、そこでひとり焼肉をしていた矢崎の口から本音の孤独感が出たら面白いなと」
スポーツの勝敗ではなく、スポーツと真剣に向き合う者の内面に目を向けることで視聴者も親しみが湧く。何より重要なのは「スポーツを知らない人にも楽しんでもらう」という視点だ。
「『オールドルーキー』も『未来への10カウント』も誤解をおそれずに言えば、常に素人の感覚でスポーツを描いています。素人目に新鮮でおもしろいと受け止めたことを、ドラマにしてお届けしようと心がけているんです。あまり詳しく知っていると当然のこととして捉えてしまい、一般の人がおもしろいと思うことに気付かないことがあるんですよ。逆に、取材して、へー!と感心することが多過ぎて、それをすべて脚本に取り入れようとするあまり内容が説明的になりすぎて、結果的に削ることもありました。情報を書き込み過ぎると人間ドラマの部分が薄くなるのでバランスに気を使っています」
「ちょっと優しすぎるかも」妻・果奈子のキャラクター秘話
大事なことは誰もがわかること。ときには「はいはい」と誰もが頷けることを書く。例えば、サッカー選手の妻が元女子アナというのはいかにも人気スポーツ選手のキャリアを表す要素のひとつである。その元女子アナが夫のお尻を叩く、なんとも人間くさいシチュエーションが親しみを湧かせる。
「妻の果奈子(榮倉奈々)が亮太郎を『何甘えてるの』『がんばりますって言いなさい!』とポジティブに励ますところに反響がありました。最初はもっと内助の功的な役割をイメージして描いていましたが、榮倉さんと制作スタッフで『ちょっと優しすぎるかも』と話し合って変更したんです。夫が現役引退して家庭の収入が減っても弱音をはかず、こういうときが来ることがわかっていたと夫を突き放して頑張らせるのは想定外のシーンでした。でもそのおかげで、絶望ばかりの主人公がコミカルに浮上していく姿も見せられた。
亮太郎の引退をきっかけに色々なことを始める果奈子のように、子供たちが育って旦那さんと二人になったとき、この生活でいいのか、これから自分に何かできることはないか、何かはじめたいと思う主婦は少なくないでしょう」
誰もが“セカンドキャリア”に向き合うときが来る
今の時代、“セカンドキャリア”という言葉はあらゆる人に関係のある言葉だろう。だからこそ、スポーツ選手が引退してセカンドキャリアを歩むドラマを通して、誰もが自分の将来に思いを馳せる。
「50代の僕の同級生はまさに定年したあとのセカンドキャリアを考える時期。ひとつの会社を勤めあげたあと、そこからまた新たな仕事をしていくことができるかは話題によく上がります。僕の娘の世代も最初からひとつの会社を全うすることを考えていなくて、セカンドキャリア、サードキャリアを考えているんですよ。
ひとそれぞれとはいえ、世代や考え方は違っても誰もが何かしらのセカンドキャリアに向き合うときが来ます。でもアスリートのようにトップを極めた人やその道ひとすじの人はセカンドキャリアと言ってもほかの道を考えにくいですよね。だからこそ視聴者は現役を終えた選手は何をするのか気になるでしょう。スポーツ選手は誰もがぶち当たる未知の世界に飛びこむ象徴にふさわしいんです」
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。