- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
メディア出演はなんと100回超…“多すぎ”批判も、柔道ウルフアロン26歳がテレビに出続ける理由「入り口は僕の名前とかキャラでもいい」
text by
岩尾哲大(時事通信)Tetsuhiro Iwao
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/29 11:02
東京五輪で金メダルを獲得してから1年。ウルフアロンが今明かすテレビ出演への思いとは
柔道スタイルがコミュニケーション能力に通ずる部分もあるのが興味深い。よく「自分の柔道をするだけ」「自分の柔道をすれば勝てる」という言葉を聞く。柔道を別の競技名に置き換えれば、多くの選手が同様の発言をしているだろう。だが、ウルフは違う。「僕は自分がどういう柔道をしたいかではなくて、相手がどういう選手かをしっかり分析して、こういうことをしたら嫌がるだろうなということを考えている。柔道は相手がいる競技なので、がむしゃらにやってもそれが通じなかったら意味がない」。メディア出演時も、方向は逆だがアプローチは同じで「どういうことを言ってもらえたら相手がうれしいか」を意識している。
無償の柔道教室も…金メダルは“ぼろぼろ”になった
柔道の普及活動は、華やかで分かりやすいメディアやイベントの出演に限らない。地方に行く際は、スケジュールの合間を縫って現場近くの道場を訪れ、大学で講演を頼まれた際は、その前に付属校での稽古に参加するなど、ボランティアで柔道教室を実施してきた。
「まずは柔道をやっている子どもたちが大事。もちろん競技人口を増やしたいということもあるが、いい思い出になったとか、ウルフに会えたから柔道を頑張ろうとか、こういうことを言ってもらえたから頑張ろうとか。少しでも子どもたちのモチベーションが上がるきっかけになれたらいいなと思っている」
今ではマネジャーがウルフの思いを汲み、本人から要請がなくても柔道教室をセッティングしてくれていることもあるそうだ。
「『柔道をやっている人にはこんな面白い人がいるんだ』『自分の息子、娘にもやらせてみたい』と思ってもらえるような活動を少しでもできたらいいなと思いながらやってきた」
とにかく柔道のPRに奔走、尽力してきた1年だった。イベントや柔道教室で子どもたちと交流する機会がある際は、もちろん金メダルを持っていく。「みんなに持ってもらって、見てもらって。それが子どもたちのモチベーションになり、いつか五輪で優勝するような選手になりたいと思ってもらうためのものだと思っている。だからたぶん、金メダリストの中でも一番ぼろぼろの金メダルだと思う」。たくさんの笑顔に触れてきた、最高の勲章だ。
《後編に続く》
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。