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オリンピックPRESSBACK NUMBER
柔道ウルフアロンが今明かす“あの東京五輪”後の本音「昨年末まで練習は4回ぐらいしか…」「ゆくゆくは全日本の監督にもなりたい」
posted2022/07/29 11:03
text by
岩尾哲大(時事通信)Tetsuhiro Iwao
photograph by
Takuya Sugiyama
昨年の7月29日、東京五輪の柔道男子100キロ級で金メダルをつかみ、あまたのメディア、イベント出演を続けてきたウルフアロン(26歳)。ユーモアあふれるキャラクターで、競技のアピールに奔走してきた。では、柔道家としてのウルフはこの先、どこへ向かうのか――。2年後のパリ五輪、そしてその後についても、ウルフならではのビジョンがあった。(全2回の特別インタビュー2回目/前編から続く)。
五輪後の本音「モチベーションはなかなか上がらなかった」
輝かしい実績は東京五輪だけではない。2017年には初出場の世界選手権100キロ級で優勝。19年には体重無差別で日本一の座を争う全日本選手権も制覇した。そして東京五輪での金メダル。4年で3つのビッグタイトルを全て取った。柔道男子の「3冠」達成者はウルフで8人目。猪熊功、岡野功、上村春樹、山下泰裕、斉藤仁、井上康生、鈴木桂治という、名だたる柔道家たちに続く快挙だった。
「歴史に名前を刻んだ」。当然、達成感は大きく、その反動もまたしかりで「モチベーションはなかなか上がらなかった」と率直に言った。メディア出演が立て込んだこともあるが、五輪後から昨年末まで「たぶん練習は4回ぐらいしか行かなかった」という。
「五輪が終わって、改めて3冠を取ったという実感が湧いてきて。次の目標を決めるまでの準備期間を、メディア出演に使ったような感じだった」
ハードなスケジュールをこなすことで、心にできた大きな空白を埋めていた側面もあったのだろう。柔道家としては確かに立ち止まった時間ではあったが、偉業を成し遂げた男がさらに次へ歩き出すためには、必要な充電の時間でもあった。
3冠柔道家だからこその、再出発の難しさ。これはやはり達成者じゃないと分からない。全日本男子の井上康生前監督には「『気持ちはすごく分かるから』と。去年は『年内はしっかり休めよ』という話をしてもらえた」と感謝する。鈴木桂治現監督にも随時気にかけてもらい、こまめにコミュニケーションを取っている。