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「勢いが通用するのはベスト8まで」イチローが見抜いた千葉明徳が超えるべき“壁”…監督主導→選手主導で何が変わった?

posted2022/07/15 17:01

 
「勢いが通用するのはベスト8まで」イチローが見抜いた千葉明徳が超えるべき“壁”…監督主導→選手主導で何が変わった?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

強豪校が揃う千葉県から甲子園出場を目指す千葉明徳

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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Kiichi Matsumoto

強豪校揃いの「戦国千葉」で鎬を削る千葉明徳。“夢の2日間”のその後を訊ねると、監督と選手の「県ベスト8」突破に向けた試行錯誤が見えてきた。Sports Graphic Number1049号(2022年4月14日発売)『イチロー指導校探訪 千葉明徳「“変わる”怖さを乗り越えて」』を特別に無料公開します。全2回の2回目(#1/國學院久我山編へ)

 千葉明徳は、夏の県大会で2019年から3年連続ベスト8入りを果たしている。強豪校の一歩手前に位置する“実力校”だ。

 同校のグラウンドにイチローが姿を見せたのは昨年11月28日。ネット裏に陣取り、國學院久我山との練習試合に視線を注いだ。

 秋季東京都大会の優勝校を相手に、千葉明徳は終盤に点差を広げられ、敗戦。監督の岡野賢太郎は、イチローのやや辛辣なコメントを記憶している。

「これじゃベスト8を越えられないよね」

 指摘されたのは、落ち着きのなさだ。選手たちが常に大きな声を出し、盛り立てるのが千葉明徳のチームカラーだが、それによる“わちゃわちゃ感”が問題とされた。

「勢いが通用するのは、ベスト8まで」

 そもそも、声出しを推し進めてきたのには理由がある。岡野監督は言う。

「うちの子たちは中学時代の実績もそれほどないですし、私が就任したころ(15年秋)は、公立校の受験に失敗して入ってくるような子も多くいて、強豪校に対して戦う前から負けているところがあった。声を出させることで『こっちがてっぺんを獲るんだ』という闘争心を植えつけたかったんです」

 声の力で勢いをつけ、敵を圧倒する。それはたしかに、千葉明徳を県ベスト8まで押し上げた要因の一つかもしれない。だが、むやみな声出しの限界を、イチローはすぐに見抜く。選手たちにこう話した。

「勢いが通用するのは、試合の前半戦まで。トーナメントならベスト8まで。その先になってくると、『最後はおれらが勝てるよな』って、落ち着いて構えているチームには負けてしまう」

 岡野監督は「子どもたちは面食らったと思います」と振り返るが、イチローの言葉は自身の心をも揺さぶっていた。

【次ページ】 岡野監督の決断「変わることを恐れていた」

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