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「勢いが通用するのはベスト8まで」イチローが見抜いた千葉明徳が超えるべき“壁”…監督主導→選手主導で何が変わった?
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/07/15 17:01
強豪校が揃う千葉県から甲子園出場を目指す千葉明徳
その一方で岡野監督がまだ物足りなさを感じるのは、「プラスαの発想や、違う視点からの意見が出てこないこと」だ。
主将の作田凌太朗が言う。
「自分たちは『他人事』っていつも言われてきました。誰かがやらないと動かないとか、全員が固まって動いてしまうとか。自主的な動きがほんとにできなくて」
そこで、チームは新たな取り組みを始めた。試合の際、イニング間のミーティングを監督主導から選手主導に切り替えたのだ。相手投手の特徴や、守備の際のポジショニングなど、各自が気づいたことを発言し、共有する。監督が何もかもを指示する“ベスト8メソッド”からは大きく外れるが、選手の主体性を育むことで壁を打ち破れるかもしれない。
まだ日は浅いが、芽は出始めている。取材に訪れた3月下旬、選手たちが一塁付近に集まって何やら話し込んでいた。投手の青柳克哉がこう教えてくれた。
「イチローさんから、塁間ではニュートラルの体勢をとったほうが打球判断がしやすいと教わりました。それを練習で実践しているなかで、ファーストライナーで(一塁に戻れず)アウトになってしまったランナーがいて。みんなで集まって話し合った結果、リードはもう少し小さくしよう、と」
以前は監督やコーチが選手を集めるのが常だったが、このとき集合を呼びかけたのは選手だった。自ら考え、発信することが習慣化しつつある。
「強豪校に勝つ難しさはわかっている」
イチローのキャッチボール相手を務めた青柳は、ツーシームやカットボールといった小さく動く変化球の習得を勧められ、練習に励んできた。春の大会はエースナンバーを背負ってマウンドに立つ。
千葉明徳は昨年、春は習志野に、夏は専大松戸に、秋は東海大市原望洋に負けた。それを踏まえて、青柳は言う。
「強豪校に勝つことの難しさは自分たちがいちばんわかっているので、冬の間、みんなでそこに向かって取り組んできました」
イチローの来訪を機に変わり始めた千葉明徳。強豪撃破のすぐ先に、甲子園が待っている。
(#1/國學院久我山編につづく)
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