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まだまだ進化中…“大谷翔平の理想形”はどこに? 五十嵐亮太が指摘「変化の違う2種のスプリットを使っていきながら…」
posted2022/07/19 11:04
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Getty Images
実は多くなかった「真っ直ぐのスピン量」
昨シーズンの「投手・大谷」は、二つの顔を見せてくれました。前半戦、特に序盤はまるでクローザーのようなピッチングでしたよね。全球、全力で強いボールを投げ込んでどこまでいけるか、というスタイル。一方で、自分の持っているボールをコントロールできない場面もあり、ストライクゾーンから大きく逸れる球や、四球の数も多かったです。
ところが後半は先発投手らしい、組み立てていくスタイルに変わった。真っ直ぐ、変化球ともにコントロールが良くなったこともありますが、球数を減らすために打たせてとる、というピッチングをしていました。ストレートの割合も後半から大きく変わりゴロアウトも増えた。変化球を混ぜながらどう抑えるか、という考え方になったのだと思います。
結論から言えば、後半のピッチングの方が先発投手としては利するところがあるわけで、それは大谷投手が登板を重ねるなかでアジャストしていった成果なのでしょう。実は彼の場合、真っ直ぐのスピン量は他のピッチャーと比べて多くないんです。スピン量が多いほど伸びのあるボールになりますから、大谷の直球は打者にとってスピードは出ているけれどコンタクトしやすい球質と言える。データを見ると真っ直ぐの被打率はやはり少し高いんですよ。
スピン量を上げるには、肘の使い方やボールの握り方など色々なアプローチがあります。ただし、厄介なのはそれによって他の球種にもズレが生じて崩れてしまう可能性があること。従って、真っ直ぐのスピン量を上げることにこだわるよりは、彼が後半戦見せたようなピッチングを追求しながら、新しい球種を覚えたり配球の組み合わせを変えていく方が合っているのかな、と思います。
昨シーズン、最も印象に残ったのは10勝目をかけてのぞんだ9月19日のアスレチックス戦と、同26日のマリナーズ戦の登板でした。シーズンを通し二刀流で活躍した蓄積疲労にもかかわらず、素晴らしいピッチングを見せてくれました。打たせるスタイルでありながら、大事な局面では一段ギアを上げて狙って三振を奪っていた。おそらくああいうピッチングこそ目指す理想形で、今シーズンにつながる道筋になるのではないでしょうか。