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大谷翔平「去年に比べてボールが…」“飛ばないボール”が影響する選手、しない選手は何が違う? 小早川毅彦がポイント解説
text by
小早川毅彦Takehiko Kobayakawa
photograph byGetty Images
posted2022/06/04 11:05
今季、大谷翔平の打席で見られる「これは行ったな」から「あれ?」と戸惑う仕草。飛ばないボールが原因なのか、小早川毅彦氏に聞いた
MLBでも、2002年ごろから数年間、ロッキーズの本拠地デンバーのクアーズフィールドでは湿度を高くした特別室で試合球を保管していました。気圧が低い標高1609mの高地にあるため、ボールが飛びすぎることを防ぐために行われていたものです。その発想は、1996年に野茂英雄投手がノーヒットノーランを達成した際、雨上がりで湿度が高かった、ということをヒントにしたという話を聞き、興味深いなと感じたものです。
日米ともにかつては、ボールに無頓着なところがあり、球団や球場ごとに条件が違うのも野球の一部、というような大らかさがありました。現代の野球は「統一球」が導入されたり、ボールの保管方法が定められるなど、より厳正になっています。加えて回転数など瞬時に詳細なデータを見ることもできるので、投球、打撃に向ける意識も、より繊細になっているのかもしれません。
「ボールの変化」は気にするべき?
大谷選手について言えば、おそらく飛距離の変化やボールの影響といった原因について、自分自身で既に分析できているのではないかと思います。ただ、それを気にするかどうかは別の問題。昨シーズンより飛距離が出ないとしても、ホームランはしっかり出ているわけですから、全く意識しないで次の打席、次の試合とのぞめるならば、何も変える必要はない。
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今の彼のバッティングは、昨シーズンのオールスター後にホームランの数が少し落ちてきた時から強く意識している「形」でもあります。体が開いてしまったり、タイミングを外されることがあったので、ポイントを近くしてボールの内側を打つようなイメージを持つことで、相手に崩されないようにしているのです。
ボールに合わせてこれを無理に変えることが彼のプラスになるのかは分からないし、これから夏場を迎えてボールの特徴も気候によって変わって来る可能性だってある。そもそも「ホームラン」というもの自体が、球場のサイズや環境に多いに左右されるもので、その条件は全ての打者にとって公平というわけではないのですから。もし私が彼のコーチだとしたら「全然気にしない方がいいよ」と言って送り出すかもしれませんね。
構成:佐藤春佳
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