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村上茉愛ら引退で世代交代…「わがままで甘えん坊」「正確だけど泣き虫」 体操女子10代トリオの“スゴいクセと伸びしろ”〈14歳新星も〉
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/06/02 06:00
(左から)山田千遥、宮田笙子、笠原有彩。日本体操女子を背負って立つ存在だ
「ちょっと感情が高ぶってしまう子で、それが出てしまった。国際大会も行ったことがないし、(原因は)経験の浅さもあると思う。でも、逆にそれは伸びしろ。今回のような経験は今後に生かせると思います」
NHK杯3位で代表入りした山田は、これまで上の世代の壁を越えられず、大きな目標にしてきた東京五輪も落選。2019年の世界選手権も補欠で、努力がなかなか報われない「苦労人」だった。朝日生命クラブで指導する元日本代表の上村美揮コーチは言う。
「悔しい思いをしてきたと思う。何かが飛び抜けて得意という感じではないけど、段違い平行棒は質の高い演技をするし、今後も彼女らしさを出していきたい」
試合の緊張感の中でも、はじけるような笑顔が印象的。「体操が分かってきたり、楽しめるようになってきて笑顔が増えた」と、上村コーチは温かく見守る。
14歳にして大きな期待を受ける2人の名前とは
実は、3人より下の年代には大きな期待を受ける選手たちがいる。筆頭は14歳の山口幸空(米田功ク)。NHK杯は個人総合8位に食い込み、種目別の平均台とゆかは全体トップの得点をマークした。
宮田にはあれだけ辛口な明名さんも、「幸空は最高。しなやかで、美しさの中に芯が通っていて、力がある。胸の可動域もすごく広い」と絶賛する。NHK杯12位で14歳の岸里奈(戸田市スポーツセンター)も、山口に並ぶ期待株。2人とも年齢制限により今年の世界選手権は出場資格がないものの、早くもシニアに交じって存在感を出している。
上には世界で表彰台を争った村上ら、下には才能豊かなジュニア世代が控えており、宮田たちは「谷間の世代」とも言える。
日本女子が本気でパリ五輪の出場枠を狙うのが、団体総合上位3チームだけが獲得できる今年ではなく、上位9チームに与えられる来年の世界選手権になる。ただ、「今のままだと厳しいかも……」とささやく指導者は少なくない。日本として5大会連続の五輪出場が懸かる舞台は、宮田らがどれだけ成長できるかに懸かっている。
シーズンはまだ序盤。宮田、笠原、山田のいずれもNHK杯ではそれぞれができる最大限の技に挑戦したわけではなく、得点を伸ばせる余地はある。「世界で戦うには、演技構成を落としていたらいけない。その中でもEスコア(出来栄え点)を落とさない練習を日々できるようにしたい」と宮田。日本を引っ張る自覚を日々の積み重ねで示し続け、「谷間の世代」などと言わせない力を身につけてもらいたい。
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