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村上茉愛ら引退で世代交代…「わがままで甘えん坊」「正確だけど泣き虫」 体操女子10代トリオの“スゴいクセと伸びしろ”〈14歳新星も〉
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/06/02 06:00
(左から)山田千遥、宮田笙子、笠原有彩。日本体操女子を背負って立つ存在だ
「性格です」
脚力に加え、柔軟性や動きの良さなど一流に成長できる素質があることは、中学時代から関係者の目に留まっていた。ただ、そうした才能を十分に磨けていなかったようだ。ゆかなど好きな種目は練習するが、苦手な平均台はあまりやらない。気分が乗らない日は練習に身が入らない、といった具合に。コーチは続ける。
「甘さしかなかった。はっきり言うと、わがままなタイプ。甘えん坊だったり。強いし、勝ちたいという気持ちもあるけど、すごく気分にムラがある。その辺の波をちょっとずつ穏やかにしていきました」
「あんたが思っている100%は100%じゃない」
この4年ほど、ゆかの振り付けを指導する元日本代表の明名亜希子さんも同意する。
「練習を7、8割の力で適当にやろうとするから、怒ることもある。『あんたが思っている100%は100%じゃない。自分が思う120%くらいがちょうどいい』って。あれだけ試合でタンブリング(跳躍)できる子が『こんな程度のはずはない』というのは、見ていれば分かるから」
宮田は4月の全日本個人総合選手権で2位、5月のNHK杯では初優勝し、世界選手権代表に決まった。それでも、得意のゆかは明名さんの目には物足りなく映っていた。
「私の指導した振り付けと全然違うし(笑)。タンブリングをちゃんとやりたいがために、その間の動きを置きに行ってしまい、本来出すべきスピードやパワーが出ていない。そうなると、芸術面や動き方のバラエティの面で減点されてしまう。小さく収まり、何をやっているか分からなかった」
才能を見抜いているからこそ、言葉はきつくなる。
「小さいときから本当に能力は高いので、ちゃんとやれば世界でも戦えるはず。『お祭り女』で『お調子者』だけど、それは自己表現をする体操競技においてはある程度必要な要素。しっかり準備をした上で、それが良い方向に出てくれることを願っています」
正確だが「泣き虫」な笠原と、苦労人の山田
全日本で初優勝し、NHK杯も2位に入った笠原は、ミスの少なさや体操の美しさが持ち味。笠原のゆかの振り付けも指導する明名さんは、「教科書のような正確さ」と評する。ただ、感情の抑制が得意ではない「泣き虫」な一面もある。
NHK杯では、出だしの跳馬で着地の際に右足首を痛めてしまった。その後も、同じグループで演技した選手らに励まされながら奮闘したが、最終種目のゆかは不安もあったようで、演技前から泣いてしまった。
所属先のレジックスポーツで指導する元日本代表の岡崎美穂監督は振り返る。