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女子体操の超新星・山口幸空14歳は何がスゴいのか? パリ五輪への挑戦、強化本部長は「世界選手権の合宿にも参加してもらいたい」

posted2022/07/18 06:00

 
女子体操の超新星・山口幸空14歳は何がスゴいのか? パリ五輪への挑戦、強化本部長は「世界選手権の合宿にも参加してもらいたい」<Number Web> photograph by KYODO

しなやかでダイナミックな開脚ジャンプは一見の価値あり。さらなる伸びしろも十分な山口は日本体操界の宝だ

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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 女子体操界にパリ五輪へ向けて期待の新星が現れた。6月体操の全日本種目別選手権で、14歳の中学2年生、山口幸空(さら=米田功体操クラブ/星槎中学校)がゆかと平均台で2冠を達成した。

 4種目の個人総合で競った5月のNHK杯でも1位の点を出した2種目で、シニア大会の初タイトルを獲得。「緊張した中でもNHK杯と同じ良い演技をして、通しきれた。自分の良さを出せてうれしい」。はにかみながら話す声は小さいが、可能性は大きい。

 中でもいずれ世界を驚かせるであろうポテンシャルを感じさせるのは、ゆかだ。長い手足や、指先、つま先まで神経を行き届かせた細やかな動きもさることながら、圧巻は胸や腰の柔らかさを生かした芸術的な動き。

「元々身体は柔らかいのですが、練習でも柔軟運動をして意識しています」と語るように、前後開脚ジャンプは高くて美しく、空中で蝶が舞っているかのように見える。足を頭上に持ち上げるI字ターンには余裕がある。

 今回の種目別選手権では、成長段階ながら演技構成の難度を示すDスコアは5.5点に達し、出来映えを示すEスコアは8点台半ばと高評価。合計13.833点を出した。新しい採点ルールで重視される表現力で世界にアピールできるのも強みだ。

「少しパリには近づけたと思う」

 もう一つの優勝種目となった平均台では、昨年の東京五輪6位入賞で世界選手権金メダルに輝いた芦川うらら(日体大)がミスで崩れる中、山口は減点を最小限に抑える演技を見せた。幅10cmの台の上で示したバランス感覚や、降り技での軸のブレないひねりの技術は、天性の才能と基礎力の高さを感じさせる。

 世界選手権や五輪の出場は16歳からとなっており、世界選手権には来年も出場できないが、パリ五輪には間に合う。身長はこの1年で8cm伸びて150cm。身長や筋力が今後さらにアップすれば、より難度の高い技も組み込めるだろう。日本体操協会の田中光・女子強化本部長は「将来的にとても期待できる選手。今年度から世界選手権の合宿にも参加してもらいたい」との強化プランを明らかにする。

「少しパリには近づけたと思う」と話す14歳の2年後が楽しみだ。

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