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「これが引き際なんだな」“世界のTK”高阪剛52歳が引退を決意した“本当の理由”…ラストマッチのRIZINへ「ヘビー級って面白い」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2022/04/15 11:03
4月17日のRIZIN.35での試合を最後に、現役引退を迎える高阪剛。試合を控えた現在の心境とは。
若い選手たちが優先されるべきだと思ったんです
――コロナ禍でしばらく格闘技の大会自体が開けませんでしたからね。
高阪 それでも「コロナが収束したらもう一度リングに戻ろう」と、トレーニングはずっと続けていたんですけど、コロナの状況はまったく出口が見えなくなってしまい……。ようやく大会がぼちぼち開催できるようになっても、今度はいまいちばん経験を積まなきゃならない若い選手たちが優先されるべきだと思ったんですね。
――試合の出場枠にはかぎりがあるわけですからね。
高阪 だからまず若い選手を優先して、その先に自分の試合もあればいいなというふうに考えていたんですけど。そう考えること自体、現役選手でありながら他の選手に道を譲っている自分がいることに気付いてしまったんですよ。
――プロの現役選手であるならば、他の人を押しのけてでも自分がチャンスをつかむべきじゃないのか、と。
高阪 でもいま自分は、若い選手たちが活躍したら心からうれしいし、逆にちょっとうまくいかなかったりすると心配になる。自分の中でそういう若い選手に譲るべきという考えが生まれているのに気付いたとき、だったらケジメとして選手は退いたほうがいいと思ったんです。
現実的に、もし若い選手と試合が組まれて、ちょっとでも「譲ってやる」ような気持ちが生まれたら勝てるわけもないし、試合自体も成立しないだろうと。自分にとって格闘技の試合というのは、お互いに真剣を抜いた状態でやり合うものだと思っているので、それを抜けないような状態なら試合をやるべきじゃない、という考えなんですね。
「これが引き際なんだな」という感情が生まれた
――では、2006年にマーク・ハント戦を最後に一度引退したときとは、理由も気持ちもまったく違うわけですね。
高阪 違いますね。あの時は、選手としての気持ちはまったく切れてなくて、体も全然問題なかったんですけど、ジムを立ち上げたり、子供が生まれるタイミングだったりして。試合以外のところに力を注がなきゃいけない状況が生まれたので退いたんですよ。でも、今回はその時とはまったく違って、自分自身に「これが引き際なんだな」という感情が生まれたことが引き金になりましたね。
ただ、もう1試合だけ選手としてやりたい気持ちがあったので、去年の10月くらいから、RIZIN側とラストマッチについての相談をさせてもらったんです。