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「これが引き際なんだな」“世界のTK”高阪剛52歳が引退を決意した“本当の理由”…ラストマッチのRIZINへ「ヘビー級って面白い」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2022/04/15 11:03
4月17日のRIZIN.35での試合を最後に、現役引退を迎える高阪剛。試合を控えた現在の心境とは。
年の差26歳…ヘビー級だからこそ実現した対戦
――たしかに言われてみればそうですね。日本人との試合はリングスルール時代まで遡らなきゃならない。
高阪 だからこそ、最後にこれから出てくる日本人選手とやれたらいいなっていう気持ちがあったんです。
――でも、冷静に考えると高阪さんと上田選手の年齢差って、ダブルスコアなんですよね。
高阪 そうなんですよ。自分は先月52歳になって、上田くんは26歳。ちょうど半分ですから。それもかつてないですよね(笑)。
――ある意味、こういうマッチアップもJMMA、日本格闘技界ならではですよね。
高阪 アメリカだったら、アスレチックコミッションが認めてくれないでしょうからね。また、これが軽量級だと日本でもなかなか難しいと思うんですよ。スピードや反射神経がより重要視されるので。そこはヘビー級というファンタジックなものが残されている階級だからこそ、こういう年齢差でも試合が成り立つ。自分で言うのもなんですけど、ヘビー級って面白いなって思いますよ(笑)。
――年齢差だけでなく、極真空手の世界王者がデビュー戦でキャリア28年の選手に挑むというのもおもしろいですよね。
高阪 そもそも歴史を紐解けば、日本の総合格闘技の源流にはアントニオ猪木vsモハメド・アリなど、異種格闘技戦があると思いますからね。だからヘビー級の他流試合というものが根付いていて、自分の中の奥底にもそういったものがあるのかもしれない。
――でも、52歳になった高阪さんが、26歳の極真世界王者と対戦するというのは、正直、見るのが怖い部分もあるんですが。
高阪 そうですか? 自分は楽しみでしょうがないですけどね(笑)。日本人選手との試合ってどんな感じなんだろうっていう純粋な興味があるし。自分はこれが最後の試合ですけど、初めてのことが多すぎて新鮮なわくわく感だらけなんですよ。
今まで、クラッチを取ろうとしても体が分厚すぎて手が届かない相手とか、スタンドで「ここなら大丈夫だろう」という距離で闘っているのに、めちゃくちゃリーチが長くてバンバン殴られたりとか。足が長すぎてタックルにいけないとか、そんな相手ばっかりだったので(笑)。
――マーク・ハント、ジェームス・トンプソン、バルトとか、規格外ばかりでしたもんね(笑)。
高阪 そうなんですよ(笑)。でも、「ああいうバケモノに勝つためにはどうしたらいいんだろう?」と試行錯誤を重ねた結果、自分も強くなれたと思うので。そうして培ってきたものの集大成として、最後に初めて日本人対決ができるというのは、何か運命的なものを感じざるをえないですね。
――では最後の試合は、これからの選手たちに伝えたいことを込めて闘う感じですか?
高阪 試合なので、どういったものが見せられるかはわからないし、自分はとにかく今できることを目一杯やることしかできないですけど、それが結果的に他の選手たちに響くものがあればうれしいなと思いますね。そのためにも、自分ができることはすべて出し切るつもりです。