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甲子園の風BACK NUMBER
スカウトが分析する「センバツの本塁打格差・3つの要因」とは〈大阪桐蔭は大会新11本、浦和学院も4本量産も〉
posted2022/04/05 11:01
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Nanae Suzuki
ホームランが出ない――高校野球関係者やファンからの声は日増しに大きくなっていた。それを文字通り“打ち壊した”のはセンバツ1大会最多記録となる11本塁打を放った大阪桐蔭だが、延長戦やタイブレークに象徴されるように、今大会は接戦の印象が強かった。
緊迫した試合展開、1点を争う攻防が観客を惹きつけるのは間違いない。一方で、打球がスタンドに届いた瞬間の盛り上がりも野球に欠かせない要素だ。今年のセンバツでは、19日の開幕戦で大会第1号が生まれた。浦和学院の5番・高山維月が大分舞鶴戦の4回にバックスクリーンへ2ランを放った。
ここから次の1本が出なかった。第2号は24日。またも浦和学院だった。和歌山東との2回戦で、3番・金田優太が5回にライトポール際へソロ。つまり、1回戦16試合でホームランを打ったのは浦和学院だけ。金属バットが導入された1975年以降、全てのチームが初戦を終えてホームラン1本は最少だった。
なぜ、ホームランが出なかったのか
なぜ、ホームランが出なかったのか。在京球団のプロ野球スカウトは、こう分析する。
「まず、考えられるのが実戦不足です。例えば、徳島の鳴門高校は新型コロナ対策の一環で、秋季大会が終わってから一度も対外試合ができなかったようです。マシン打撃やティー打撃でバットを振り込んでも、生きたボールを捉える感覚はつかめません。
実戦不足の影響は守備にも表れました。甲子園に出場する高校は守備力が高く、ミスが少ないのが特徴です。しかし、今大会はエラーが目立ちます。特にフライの目測を誤ったり、ゴロをファンブルしたりする野手が多いのは、生きたボールを見る機会が少なかったことの影響だと思います。準々決勝でホームランが増えたのは偶然ではなく、実戦感覚が戻ったためと考えています」
実際、センバツ出場校の監督たちは調整の難しさを口にしていた。1回戦の星稜戦に5安打で3エラー、延長11回の末に敗れた天理の中村良二監督は「どの高校も調整不足は否めません」と語った。
高校野球が大学、社会人、プロに近づいている?
スカウトは他にも、ホームランが生まれにくい要因があると指摘する。高校野球を取り巻く環境が、私立を中心として大学や社会人、プロ野球に近づいているのも、その1つだという。