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甲子園の風BACK NUMBER
スカウトが分析する「センバツの本塁打格差・3つの要因」とは〈大阪桐蔭は大会新11本、浦和学院も4本量産も〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byNanae Suzuki
posted2022/04/05 11:01
大阪桐蔭の1大会最多本塁打記録が生まれたが、今センバツでは高校で偏りが出た
「相手チームの研究が進んでいる印象を受けました。打者に応じて極端に守備位置を変えたり、配球を変えたりするチームが多いです。投手の疲労を加味しなければ、短期決戦、一発勝負ではバッテリーが有利な傾向にあります。打者は事前に相手投手の映像を見ていても、初めての対戦で対応するのは簡単ではありません。さらに、相手から細かく研究されれば、ホームランを打つ難易度は高くなります。
また、市立和歌山・米田(天翼)投手や近江・山田(陽翔)投手のように、カットボールやツーシーム、球速があって小さく落ちるスプリットなど、動くボールを軸にする投手が増えています。プロや元プロがSNSなどで公開している情報を誰でも手軽に入手できる時代ならではと感じていますが、動くボールを芯でとらえてスタンドまで運ぶのは難しいです」
浦和学院の監督が強調した冬のトレーニングの効果
各チームが実戦不足や動くボールへの対応に苦慮する中、浦和学院は準々決勝までの3試合全てで計4本のホームランを記録した。
森大監督は冬のトレーニングの成果を強調する。
「バットの芯に当てる」
「バットを振り切る」
長打力を上げるため、この2つに重点を置いて木製バットを使って練習したという。
そして、新型コロナによる実戦不足を想定して、昨年12月と今年2月に紅白戦を多く取り入れた。準々決勝の九州国際大付戦で8回に3ランを放った鍋倉和弘は「昨年のチームでは1キロの竹のバットを使っていましたが、木製バットは竹よりもしっかり芯に当てないと折れてしまいます。自分のポイントでバットを強く振る意識を持って冬に練習してきました」と明かした。
スカウトが感じたのは、浦和学院打線のスイングスピードとボールを捉えるポイントだった。
「浦和学院は下位打線までスイングのスピードが速いです。当然、バットにボールが当たれば、スイングが速い方が打球は遠くまで飛びます。各打者のボールを捉えるポイントがキャッチャーに近いのも特徴です。スイングが速いためにギリギリまでボールを引き付けて打つことが可能で、ボールを見る時間が長くなるので動くボールにも対応しやすくなります。
また、相手投手からすると、下位打線まで気が抜けないと球数以上に疲労がたまり、失投が多くなります。浦和学院のホームランは4本とも違う打者というのが、抜け目のない打線を象徴しています」
対戦相手のファーストが「鋭いスイング、すごいですね」
浦和学院打線の印象には、昨秋の公式戦で出場校の中で最多となる18本塁打を放った九州国際大付も驚きを隠せなかった。