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プルシェンコの素顔を知るフィギュア海外記者が分析、“プーチン擁護発言”の真意とは? 知人も逮捕…ロシア“思想弾圧のリアル”
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/03/15 17:15
ウクライナ出身でアルベールビル五輪金メダリストのヴィクトール・ペトレンコと、プーチン支持者としても知られるプルシェンコ
ロシア締め出しへの懸念「ますます孤立していく」
その一方フラード氏は、芸術やスポーツの世界でロシア人が国際社会から締め出されていることには、反対だという。
「ロシアの選手たちはロシア国内にいれば、正確な情報に接することができません。彼らをロシアの外の報道に触れさせ、若者たちをこちら側の味方につけることはとても重要なことです。でも今の状態では、ロシア人たちは自分たちが不当な扱いを受けていると感じることになり、国際社会からますます孤立して、心が離れていってしまっているのです」
彼女のSNSにも、「ロシアの選手は強いので不当な嫉妬を受けている」という声も届いているという。
だが現実問題として、今ロシアの選手が国外に出て来たなら、本人たちの身の安全の問題も出てくる。大会の現場での選手間の言い争い、小競り合いを未然に防ぐことも難しいだろう。またコーチやチーム関係者が、ロシアの外に出ても選手たちが現地のニュースを見ることなどを厳しく監視して規制することも予想できる。
ワリエワ騒動については「北京では原則が守られていなかった」
この侵略戦争で、まったくニュースから消えてしまったカミラ・ワリエワのドーピング陽性事件については、どう考えているのだろうか。
「まず、検体が何らかの理由で汚染されていた検査ミスの可能性を100%排除することはできません。完全に有罪が証明されるまでは、犯罪者として扱ってはいけない。その原則が北京では守られていなかったと思います」
だがエテリ・トゥトベリーゼコーチがきちんと会見を開くなどして、もっと真摯にマスコミ対応の矢面に立っていたなら、状況はかなり変わっていたはずだ。
「その通りですね。彼女はもっと選手を守るための言動をするべきでした」
今後、分けて保管されていた予備検体(Bサンプル)の検査が行われるのが通常のプロセスだ。
「本人は、Bサンプルの分析を拒否する権利があります。でもその場合は、最初のサンプルの陽性が最終結果ということになります」
だがいずれも、軍事侵略が終結し、世の中が落ち着いてロシアが国際社会に戻って来るまでいったん保留になりそうだ。それは一体、いつの日になるのだろうか。
「毎日、心を痛めながらニュース報道を見ています。ウクライナの選手たちの無事を祈りたいです」
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