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俳優兼プロ雀士・萩原聖人に聞く「麻雀はスポーツ化できるのか?」“30打席連続三振”のような不条理も「決して“運ゲー”ではない」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byYuki Suenaga
posted2022/02/20 17:03
俳優兼プロ雀士として活躍する萩原聖人に、Mリーグの現在地や麻雀の奥深い魅力について話を聞いた
それでも、麻雀の“完全なスポーツ化”はまだ難しいのではないか、というのが萩原の見解だ。
「スポーツとして世の中に認知されていくためには、もっといろいろなことを変えていかないといけない。現状は曖昧なルールもたくさんあるし、点数計算も初心者には難しい。本当にイメージを刷新したいのであれば、あらゆる情緒を失ってでも、新しいユーザーを獲得するために業界全体で改革を推し進める覚悟が必要なのかもしれません。でもたぶん、極限までスポーツ化を推し進めた“新しい麻雀”の世界に、僕の居場所はないと思います(笑)」
実力と運、どちらの要素もあるのが麻雀の面白さ
萩原が語るように、団体や大会ごとに「一発・赤ドラ・裏ドラ」の有無などのルールが異なる点や、同じ翻数でも“符”によって点数が変わるという複雑な計算方法は、麻雀のスポーツ化を阻害している一因だろう。
加えて運の要素が結果を大きく左右することも、麻雀を公平な競技として捉える見方を否定する材料になる。身も蓋もないが、「麻雀って“運ゲー”でしょ」という意見も決して少なくない。
「おそらく、将棋や囲碁のような実力勝負の世界に近づいてくれたほうが、麻雀という競技にとってはありがたい。でも4人が同卓する以上、運の要素は決して消えないんですよ。1対1なら自分の正着が勝敗に直結するケースが多いと思うんですけど、麻雀は正着を打ち続けてもラス(4着)になることが多々ある。対人のゲームではあるけれども、相手の手の内がわかりにくい。そこに“読み”を入れるのが麻雀ならではの面白さなんですけど、否応なく運が絡む時点で、将棋や囲碁と同じように扱うのは難しいんじゃないでしょうか」
今シーズンのMリーグでは、所属する最高位戦日本プロ麻雀協会で数々のタイトルを獲得してきた強豪・村上淳(赤坂ドリブンズ)が、出場4試合連続で箱ラス(持ち点が0点以下の4着)という憂き目に遭った。萩原は「村上淳という雀士の実力、これまでのイメージからするとあり得ないと思うような出来事ですが、麻雀ではそんなことも普通にあり得てしまう」と実感を込めて語る。
「たとえば野球で『イチロー選手が30打席連続で三振しました』はあり得ない。ノーヒットだったとしても、絶対にバットには当てるでしょうから。そんなレベルの不条理がしばしば起きてしまうのが麻雀の怖さであり、面白さでもある。とはいえ、僕自身は決して“運ゲー”ではないと考えています。運の要素が多分に含まれているのは間違いないですが、実力が占める割合も大きい。逆に言うと、麻雀はそのバランスでいいじゃないか、と」