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「ヴィーガンになって筋力が上がった」元120円Jリーガー・安彦考真(44)がプロ格闘家に転身…元西武・相内誠と“異種球技戦”へ
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2022/02/15 17:00
2月16日の『RISE FIGHT CLUB』で、44歳の安彦考真(左)は相内誠との「元Jリーガーvs元プロ野球選手」対決に臨む
2年前からヴィーガンに「筋力は逆に上がっている」
Jリーガーになる前、安彦は年収1000万円以上のサラリーマン生活を捨てた。
「もうこれ以上、このままの自分ではいられない」と思ったことがきっかけだった。学校の講師をしているとき、安彦は「10回の素振りより1回のバッターボックス」と実戦の重要性を説いた。しかしそう教えているのに、実際にはバッターボックスに立っていない自分に嫌悪感を覚えた。
「生徒は行動に移すけど、僕はしていない。何も言えないと思いました」
だからこそ、以前目指していたJリーガーをもう一度目指し、具現化した。そしていまは格闘家を目指す。後悔は微塵もない。2022年2月の安彦は、格闘家としての現在を懸命に生き抜く。20時から翌昼12時までは内臓を守るためのプチ断食が日課。13時から16時のジムワークの合間にも、水分以外で口にするのはサプリメントだけという徹底ぶりだ。
「食事やお酒で内臓を24時間稼働させていたら、(体作りには)耐えられない」
2年前から食事はヴィーガンになった。こちらの方も効果は絶大と胸を張る。
「とくに持久力は全然違う。ヴィーガンになって筋力は落ちるかと思ったら、逆に上がっている」
過剰なエネルギーと度を越えた集中力を武器に、昨年4月、安彦はアマチュア格闘家としてデビューしKO勝ちを収めている。運が良かったわけではない。緻密な戦略を立て、それを実践したうえでの結果だった。
「自分でもやるけど、キックの指導を受けるコヒさん(小比類巻貴之)の分析力はものすごく高いので、それを基にやっています。あとは以前から通っているジム(MTX ACADEMY)の木村匡宏さんをはじめとするトレーナーの方々が、対戦相手の骨格から脇腹の位置まであれこれ分析してくれる。それを自分の中で映像化してやっている感じですね」
昨年12月10日には、元テコンドージュニア王者という高校生と激突。戦前の予想は圧倒的に不利だったが、判定勝ちを飾った。キャリア3戦目だったにもかかわらず、安彦はパンチを連打する合間にヒザ蹴りを挟み込むなど相手の出方に合わせ落ち着いて闘っているように見えた。以下は試合開始、早々対戦相手がいきなり飛び込んできた場面の回想だ。
「その瞬間、『あっ、気負っているな』と冷静に対処することができたんですよ」
普段からプロのキックボクサーと練習していることも自信の裏付けとなった。
「いつもRISEに出ている京介君と練習しているんですけど、試合になったら『プロである京介君より強いわけはない』と思うことができる。それも大きかったですね」