フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
鍵山優真18歳のジャンプはなぜジャッジに評価されるのか? 個人戦につながった、団体銅メダルの演技に隠された“秘密”を分析
posted2022/02/08 17:40
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Getty Images
北京五輪のフィギュアスケート団体戦で、日本が念願となる銅メダルを獲得した。カップル競技の人口が少なく、育成に苦労してきたチームジャパンにとって、歴史的な一歩となる五輪メダルだ。驚くべきは、4人と2組が、全カテゴリーでほぼパーフェクトの演技でつないだこと。チームジャパンの力の結晶といえるメダルだった。
ソチ五輪、平昌五輪と5位だった日本だが、今回はメダル圏内。カナダ、中国との攻防が予想されていた。予選では、男子ショートで宇野昌磨が2位、リズムダンスで小松原美里&小松原尊組が7位、ペアのショートで三浦璃来&木原龍一組が4位、そして女子ショートで樋口新葉が2位となり、総合3位で決勝に勝ち進んだ。
この時点では、まだ中国、カナダにも銅メダルの可能性が残されていたが、完全に流れを日本に持っていったのが、男子フリーを滑った鍵山優真だ。208.94点をマークし、現ルールで史上3人目となる200点超えで首位に立つ。チームジャパンに順位点10点をもたらすと、2位のアメリカが42点、3位の日本が39点、4位のカナダが30点となり、カナダの逆転はほぼ不可能、むしろ銀メダルすら射程圏内という立ち位置になったのだ。
鍵山のこの208.94点を分析すると、個人戦へと繋がる、大きな成長が隠されていた。
鍵山のジャンプはなぜジャッジに評価されたのか?
鍵山の高得点のカギとなったのは、国際大会で初挑戦となった4回転ループでプラス評価されたことだ。実際には、4回転ループは着氷ミスがあった。しかし出来映え点(GOE)は「+0.6」がついたのだ。プラス評価であることを聞いた鍵山は思わずこう言った。
「はい? なんで? 僕はマイナスの方だと考えていました」
もちろん、なぜプラスになったかには、ワケがある。
シーズン当初、鍵山は4回転ループをプログラムの1本目に持ってきていた。新たな高難度ジャンプを入れるときは、冒頭に跳ぶのがセオリーだ。一番体力がある状態で、全力の力で跳べることを優先する。しかし成功が無いまま、グランプリシリーズでは封印していた。そこで、今年1月から練習を再開した鍵山は、作戦を変えた。
「最初に4回転ループを入れていたんですが、もしループに失敗すると、その悪いカーブのまま4回転サルコウも失敗するという流れが結構あったんです。だから最初は、確実に跳べる4回転サルコウをきっちり決めて、それから4回転ループを跳びたいなと思って、順番を変えました」