フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
鍵山優真18歳のジャンプはなぜジャッジに評価されるのか? 個人戦につながった、団体銅メダルの演技に隠された“秘密”を分析
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byGetty Images
posted2022/02/08 17:40
2月6日の団体戦フリーで見事な演技を見せ、銅メダルに大きく貢献した鍵山優真
すると団体戦フリーの本番前、宇野からはこんなメッセージが送られてきた。
「今日はトレーニングがあるから見に行けない。個人戦の練習だと思って頑張れ」
それを読んだ鍵山は「宇野選手らしい応援の仕方だ」と、心の中で苦笑した。五輪という舞台であることも、メダルがかかっていることも、まったく関係ない。「個人戦の練習」という先輩のメッセージは、スッと心に入ってきた。
「6分間練習の時から、謎の自信があって、緊張を全然感じなくなりました。オリンピックというより、普通の試合という感じで、自分らしくいられたと思います」
本番直前、父の正和コーチから「悔いの無いよう全力でやってこい」と背中を押されると、気持ちが固まった。
鍵山「今日は心の底から楽しめました」
迎えた本番では、4回転サルコウ、ループのあと、すべてのジャンプがパーフェクト。4回転トウループからの連続ジャンプを演技後半に持ってくるという新たなチャレンジもあったが、まるで長年やってきたジャンプのように迷いなく跳んだ。
「せっかくのオリンピックなので変に緊張して悔いを残したくないと思って。いつもは緊張している自分を騙すために『楽しまなくちゃ』と思っていたんですが、今日は心の底から楽しめました」
五輪の魔物を、見事に追い払った鍵山。個人戦へと繋がる流れを手にした。
ちなみに応援に来なかった宇野だが、ちゃんと鍵山の演技をチェックしていた。刺激を受けたのか、その夕方の練習では急にギアが上がり、3種類の4回転を次々と成功。リンクから上がると、「優真君、最高でした!」と満面の笑みを見せて、会場を後にした。
宇野の言葉で調子を取り戻した鍵山が、今度は宇野を刺激する。団体戦をともに戦い抜いた2人は、その銅メダルを自信に、個人戦へと歩を進めた。