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「悔しがる場所にも立てていない」宇野昌磨が震える声で語った日…国別対抗戦で見せていた“団体戦への強い責任感”
posted2022/02/05 06:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
大舞台での最初の演技として、申し分のない、いや、会心の滑りと言ってよかった。
2月4日、フィギュアスケート団体戦の男子ショートプログラムに出場した宇野昌磨は、完璧な滑りを披露した。
冒頭の4回転フリップを決めると、残りの2つのジャンプも成功。課題とする4回転トウループ-トリプルトウループ、トリプルアクセルも決める。
得点は105.46点で、自己ベストを更新。団体戦のポイントとしてもネイサン・チェン(アメリカ)に次ぐ2位で、次へとバトンを渡した。
演技後に右拳を握りしめた宇野は、一定の手ごたえを言葉にしつつ、手放しで喜ぶこともなく、落ち着いて受け止めていた。むしろ、反省点をあげもした。
「切れがなかったので、表現力もスケーティングも伸びていなかったです」
本来なら夜間に試合が行なわれるフィギュアスケートだが、平昌五輪に続き、この日も午前から日中の時間帯に設定された。しかも男子が最初の実施種目だけに、本来の体の動きではなかったことを明かした。
「試合=ステファン、という感じに僕の中でなっているので」
思い描いていた試合の情景とも異なっていた。コーチのステファン・ランビエールが新型コロナウイルスの検査で陽性反応を受けて、当初のスケジュール通りに北京入りすることができず、不在であったことだ。
3日の公式練習後、「不安というのは違って」と断った上で、こう語っている。
「『どうなるかな』という単純な疑問があります。やはり、試合=ステファン、という感じに僕の中でなっているので」
いざ試合を終えたあとも、不在であることに言及した。
「コーチがいないと、もうひと押しは出てこないのかなと思います。ジャンプ以外の面でもっと表現できたというか、コーチがいたら試合に感情が出せていたんじゃないかな、と」
ランビエールの存在の大きさが、それらの言葉にうかがえた。