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「悔しがる場所にも立てていない」宇野昌磨が震える声で語った日…国別対抗戦で見せていた“団体戦への強い責任感” 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2022/02/05 06:02

「悔しがる場所にも立てていない」宇野昌磨が震える声で語った日…国別対抗戦で見せていた“団体戦への強い責任感”<Number Web> photograph by AFLO

3日北京五輪のフィギュアスケートが開幕。団体戦で日本勢トップバッターを務めた宇野昌磨は自己ベストを更新する会心の演技を見せた

 体の切れ、いるはずだったコーチの不在。それでもしっかりと、気迫もどこか思わせる演技を見せた。

「練習通りにできた」と言うように、右足首が万全ではない中でも、しっかり練習を積んできたことが自信にはなっていただろう。

 同時に、団体戦であったことも後押しになったのではなかったか。

世界国別対抗戦では「申し訳ない、恥ずかしい気持ち」

 もともと、団体の試合では、責任感を常に背負ってきた。「足を引っ張らないように」と語るのが常であったし、4年前の平昌五輪でも団体戦ショートプログラムに出場しているが、そのときには「思いきりやって、少しでも貢献したいです」とチーム戦であることを自覚しつつ、1位となった。

 責任感の強さは、うまくいかなかったときにこそ如実だった。例えば昨年4月、世界国別対抗戦だ。ショートプログラムで9位に沈むと、沈うつな表情を浮かべた。

「チーム戦なのに僕が足を引っ張ってしまって……。悔しがる場所にも立てていないと思いました」

 巻き返したかったフリーでも6位にとどまった。

「チームメイトには『申し訳ない』という気持ちですが、それは求められていないと思うので、『ありがとうございます』って伝えたいです。『本人が満足していればそれでいいんだから』と言ってもらえて」

「僕が国別に出ず、他の選手が出るほうが優勝につながったと思います。申し訳ない、恥ずかしい気持ちで。失敗するたび、悲しい、ふがいない気持ちでした。今振り返ると、大会に向けて、"いい演技をするぞ"って覚悟を決められていませんでした」

 その目はたしかに赤かった。声にもどこか震えが感じられた。

 世界選手権を終えて間もない大会であり、宇野が課題としていた靴の問題なども演技の内容に影響していた。それでも責任から逃れようとはしなかった。

【次ページ】 宇野が繰り返した「真剣に謝ろう」という言葉

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